破産したら、預貯金はどうなるの?

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1.はじめに

今から約10年前の2010年頃のことです。
電車に乗っていると法律事務所や司法書士事務所の過払い金返還の広告が中吊りにあるのをよく見かけました。
テレビやラジオのCMでもよく見聞きしました。
消費者金融から借入がある場合、
場合によっては既に完済状態になっていて払いすぎた金利分を返還できる、
その過払い金を支払いの原資として残債務がある会社の返済に充てるという方法が、
可能だったのです。
その過払い金も約定利息の引き下げや時効消滅でどんどん無くなり、
かつてのような返済はできず債務整理の方針として、
破産に至ることが多くなったように思います。
まして昨今は新型コロナが蔓延して経済活動は行き詰まり、
これから再び破産する人が増えていくのでは、そう感じます。
そう思うと破産の知識をブラッシュアップしなければ、そう思う今日この頃です。


2.破産すると預貯金はどうなるの? 

さて、破産申立を行おうとする場合、それ相応の勇気が要ります。
やはり破産というと大きなマイナスイメージがあり、
それと向き合う心理的負担が大きいからです。
では、破産申立をするとどうなるのか?
特に自分がいま現に持っている現金や預貯金はどうなるのか?
よく質問を受けることなので、ここに書き記したいと思います。

 

2-1 破産の手続き

破産申立は地方裁判所に破産申立をして、免責決定を得る手続きのことです。
そのためには自分の収入がどれ位あり、
債務がどれ位あるのかを把握しなければなりません。
それを分割で支払っても一定の期間で支払うのが困難な場合、
法的に言う「支払不能」となり、破産申立という選択肢を選ぶことになります。
この申立を行うと、自分の財産を一度お金に換えて、
それを支払の原資として各債権者に債権の按分に従って分配し、
その手続きが終わると免責の決定が出る、そのような流れになります。
金銭に換価するものとしては、
例えば預貯金や不動産、株式、保険の解約返戻金などが挙げられます。
そうすると破産申立をした場合、
所持している現金や預貯金も持って行かれることになるのでしょうか?


2-2 預貯金の運用

まずここで、現金と預貯金について簡単に説明します。
現金は実際に手元に所持しているお金のことですが、
預貯金は銀行や郵便局等の金融機関に預けている債権のことです。
これらは当然に自由財産となるものではなく、
破産財団に組み入れられることになります。
自由財産とは破産者の手元に置いておいて自由に処分できる財産のことです。
ただ東京地方裁判所の運用では、
預貯金が20万円未満では財団に組み込まないことになっています。
言い換えれば20万円未満であれば破産者の手元に置いておくことが許されるのです。
20万円をラインにしているのは管財事件になる場合は
予納金が20万円必要となりますので、それを基準にしているものと考えられます。
この20万円については、
手持ちの預貯金口座の全てを合算して20万円未満であることを指します。
仮にA銀行の預金が15万円、B銀行の預金が7万円とすると、
どちらも破産財団に組み込まれ、手元に置いておくことは許されません。
ただ、この運用は東京地裁の話ですので、
他の裁判所では独自のルールが存在するかもしれません。
それはご自身で確認して頂きたいところです。

 

3.注意点

破産申立を行うときは、
申立書類の中で債権者のリストと共に預貯金のコピーを添付しなければなりません。
これで収支や残高等の財産を明らかにしていくのですが、
預貯金を守りたいがために破算申立直前にゴソッと引き出したり、
はたまた通帳そのものを隠す行為は、
そもそも免責不許可事由になるので絶対にしてはいけません。
悪質な場合は破産法による刑事処分が課されます。

 

4.終わりに

破産すると色々なものを失いますが、
全てを失うと今後の生活ができなくなってしまうので、
ある程度の財産を手元に置いておくことが許されています。
預金は今後の生活を支える大切なものですので、
申立を検討している場合、専門家等に一度確認されることが賢明です。