プロフィール

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1.電話の鳴り止まない豪邸
先祖代々地主だったのでたくさんの土地を所有していました。
また土地持ちにふさわしい立派な家がありました。
その外面に似つかわしくない債権者からの電話の数々。
それが思春期を向かえた頃の私の実家の話です。
毎月25日前後は、電話が鳴り止みませんでした。
朝の9時頃から夜の9時頃まで、何回もプルルルルとかかるのです。
今でこそ、電話番号が表示されたり、
出たくない電話番号を着信拒否する機能が電話機にはありますが、
当時はそんな機能はなくて、出たとこ勝負。
電話してきた相手が債権者か友人知人か、
実際に電話を取らない限り、わからなかったのです。
電話に出なくなると隣の家に電話してくる業者もいました。

2.不動産神話のあった時代
私の実家は小さい頃は、それは裕福な家でした。
まだ海外旅行が当たり前では無かった頃に何度も海外に行きましたし、

親は車を次から次へと新車に乗り換えていました。
多くの不動産を所有していたのを強みに、
私のおじいちゃんは不動産業をしていました。
「不動産は価値が下がることはない」
今から30年位前の日本では、それが常識だったのです。

3.身近にあったバブル
私が中高生になる頃、時代は少しずつ変化していきました。
バブルが崩壊し、神話になっていた不動産の上昇に陰りが見え始めます。
ちょうど、その頃におじいちゃんは病気になり、不動産業を私の父に譲りました。
それが1つの転機になりました。
祖父は元々、駅前に不動産を複数所有していて、
そこにテナントが何軒も入るビルを建て、
その賃料収入を収益にしたビジネスモデルを展開していました。
ただ90年代前半には銀行の人に言われて、
自分が元々所有していた土地だけでなく、
道路が通るという計画すらはっきりしない土地を買ったり、
相場観の働かない遠方の土地を買ったりしていたそうです。
もちろん自己資金だけでは賄えず、銀行から融資を受けて、
それらの不動産を購入していました。

4.家業崩壊の序章
バブルが崩壊し、不動産は値崩れを起こします。
当然、祖父が購入していた不動産もその余波を受けました。
市場価格と購入価格や担保価値に見合わない不動産が、
受け継いだ会社にもゴロゴロありました。
これらを何とかしなければならない、普通であればそう思うでしょう。
ところが、そのときは銀行も社会も、
それほど冷たい風潮ではなかったように思います。
父も一時の下落であって、再び上昇するときが来ると呑気に思っていたようです。
とはいうものの、借入金の支払いはボディブローのように効いてきます。
のしかかる支払は相当なもの。
経営者であれば、利益を出す不動産を残して、
利益を生まない不動産は売却すると考えるのが普通でしょう。
ですが、父親はそれができませんでした。
売却するということは損が確定することです。
父には損を出す勇気がなかったのです。
そしてもう一つ悲劇的な要因がありました。
父は金の計算ができなかったのです。
先祖代々担保価値のある複数の不動産を所有していたことが、
危機感を鈍らせたのかもしれません。
この2つが重なって、Xデーは刻一刻と近づいてきました。

5.貸し渋りの時代に
1998年頃は、世間では銀行の貸し渋りが話題になっていた頃です。
この頃、父の会社のメーンバンクが、担保の積み増しを要求してきました。
担保価値のある不動産は既にべったりと抵当権が付いています。
もう担保に入れるものは何もありませんでした。
そのとき、父の会社はKOになったのです。
と同時に父は破産申立を行いました。
破産申立をする前後、父は消費者金融などにも手を出していました。
今はわかりませんが、当時は商工ローンの金利も高く、
ヤミ金も今以上に跳梁跋扈していました。
父は真面目ですから
「借りたものは返す、そして財産を守るんだ。そして乗り切って再び浮かび上がろう」
と思っていたのでしょう。
でも結果として、それは傷口を広げただけでした。

 

6.実家の破産を契機に
父が自己破産したとき、私は大学を卒業したばかりでした。
会社で社会勉強をして、仕事を覚えたら実家の家業を継ぐ、
そんな思いがどこかにあったことは否定しません。
当時は私も父と同じように数字が大の苦手でした。
ですが、父の破産を機に金の流れを知らなければならないと思うようになりました。
幼少期から思春期に見てきた事業の有り様は、
後で母から聞いた話を客観的に分析してできた話です。
破産という最悪の選択肢にたどり着く前に岐路は何度もあったはずです。
そこに気づかず漫然と過ごしてきたからこのような顛末を向かえてしまったのです。
金が全てとは言いませんが、
金の流れを知ることでリスクの1つや2つを回避できるのであれば
それに越したことはありません。
我が家のような悲劇を繰り返させたくない、
そういう思いから私は税理士の勉強を始めることにしました。
法律事務所、司法書士事務所、税理士事務所。
そういった士業の事務所を渡り歩きながら、
私はいま税理士の資格取得に向けて勉強しています。
法律が骨であるならば、会計は血の流れを言うと私は思っています。
血の流れに異常が発生した場合、どんなことが起こるのか?
それを知らせたいと思い、
このブログでは主に破産にまつわることを書いていきたいと思います。