親が自己破産した後に、子供は奨学金をもらえますか?

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1.はじめに

知り合いから、こんな相談が寄せられました。
知り合いの息子は現在高校生で大学受験に向けて勉強を頑張っています。
しかも奨学金を得て大学に行こうとしているとのこと。
勉強熱心で親思いなお子さんだなと思っていると、
その相談者は過去に自己破産していると打ち明けてきたのです。
詳しく話を聞いてみると、
その方は会社をリストラされてマイホームの住宅ローンが払えなくなり、
借金を重ねた末に自己破産したとの話でした。
その話に衝撃を受けましたが、
相談したいのは自己破産した親を持つ子供は奨学金を借りられるのか?
ということでした。

 

2.破産とは

まず自己破産の手続きと意義について見ていきましょう。
自己破産を債務整理には色々な手法があります。
任意整理、民事再生、破産等です。
そのうち、破産とは自分の財産を金銭に換価しても
支払できないような場合に検討する最後の手段です。
現在抱えている債務を分割で支払っても完済できないような場合に
検討する方法になります。
破算申立をすると管財事件になるのか、同時廃止になるのか、
大きく二つの道に分かれますが、
最終的には免責決定を得て手続きが終了することになります。

 

3.免責を得るとどうなる?

その免責を得るとどうなるのか?
この免責を得ると、債務の支払義務が無くなります。
今まで抱えていた負債の返済の重圧から解放されるのです。
他方で、いわゆるブラックリストに載ることになり、
新しいローンを組むのが難しくなります。

 

4.奨学金はどうなるのか?

そうすると、私の所にやってきた相談者の息子は奨学金を組めなくなるのでしょうか?
結論から言うと、息子さんは奨学金を組むことができます。
破産したのは息子さんの親であり、息子さんが破産したのではありません。
破産したのがたとえ未成年者の親であるとしても、
奨学金を組もうとする主体が違う以上、借入を申し込む障害にはならないのです。
これは自己破産だけでなく、他の債務整理をしている場合にも当てはまります。

 

5.奨学金の注意点

奨学金の受けることはできるとしても、ただ一つ問題があります。
奨学金には保証人をつける必要がありますが、破産した人は保証人にはなれません。
保証人は誰でもいいわけではなく、資力のある人がその条件となります。
自己破産した人は、その要件を充たすことはまず難しいので、
他の人を保証人に立てる必要があります。
夫が自己破産しているのであれば、妻を保証人にする、
又は他の親族にお願いするなどです。
どうしても身内で保証人を立てるのが難しいのであれば、
奨学金の場合は機関保証人を立てることが認められている所もあります。
この場合、奨学金から保証料が差し引かれるので、
親族が保証人になる場合に比べると割高となってしまいますが、
身近で保証人を立てられない場合には選択肢の一つとすることも検討すべきでしょう。
ちなみに保証人には保証人と連帯保証人という2つの類型がありますが、
実務上はそのほとんどが連帯保証人です。
この連帯保証人は通常の保証人より責任は重いです。
保証人は債務者が払えない場合に補充的に支払う立場ですが、
連帯保証人の場合はその補充性がなく、
債務者と同等で全額の支払い義務を負うことになります。
2020年に民法が改正されて、保証人の条項も変わりますが、
連帯保証人の責任の重さに変更はありません。

 

6.息子さんはどうなったか?

さて、相談者の息子さんは親がマイホームの借金で苦しんで自己破産した事情を知り、
「家には金がない、だけど大学には行きたい」という思いから
奨学金を取って学費の安い国立の大学を目指そうとしているとの話を聞きました。
相談者であるお父さんは自己破産していて保証人にはなれませんが、
勉強熱心な息子さんの姿勢を見た他の親族が保証人になることに同意したそうです。
たまたま、話を聞いているときに携帯電話に、そんな内容の電話がかかってきました。
この話を聞いたお父さんは、ホッとした顔で帰って行かれました。