免責決定が出るとどうなるの?

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1.はじめに

目の前に大きな問題を抱えていると、
だんだんと視野が狭くなり、ついには目の前のことしか見えなくなります。
そのあと、どうすれば良いのか?などと考えている余裕がなくなるので、
それもある意味、仕方の無いことかもしれません。
目の前の支払に追われていると、その支払のためにあそこから工面して支払って、
その次に来る支払にはこうして・・と近視眼的になり、
今を乗り切ることしか頭が働かなくなってきます。
でも、その状態がいつまでも続くはずがありません。
プツンと切れる時が来るのです。
その1つが自己破産です。
ここでは、自己破産して免責決定が出るとどうなるのかを検討していきます。

 

2.免責決定が出るまで

まず、自己破産の申立をすると大きく2つのルートに分かれます。
1つは管財手続き、もう1つは同時廃止です。
これらは要する時間や費用に差がありますが、
最終的には免責決定を得るための道のりとなります。
そしてようやく免責決定を得たとしましょう。
今後はどうなるのでしょうか?

 

3.免責決定に伴う効果

3-1 免責されないものもあります

免責決定を得るということは、読んで字の如く責任を免れることを意味します。
俗に「借金がチャラになる」という言葉をよく耳にします。
法的には借金は無くなりませんが、支払の義務が法的には無くなることです。
ですので債権者に支払をする必要もありませんし、
債権者から請求を受けることもありません。
この心理的な開放感が免責決定を得る大きなメリットとも言えるでしょう。

他方で、免責されない債権もあります。以下に列挙します。
①税金
②年金
③国民健康保険
④悪意の不法行為債権
⑤子供の養育費
⑥罰金
以上のようなものは、たとえ自己破産して免責決定を得たとしても、
支払義務を負うことになります。
またあってはならないことですが、
破産申立の時に、債権者表に記載しなかった(漏れていた)債権者も、
免責決定を得たとしても支払義務は無くなりません。

 

3-2 金融機関の信用情報に名前が載ります

また自己破産すると、金融機関のリストに載ってしまいます。
銀行系、信販会社系、消費者金融系等の信用情報機関がありますが、
各機関のリストには事故情報という形で一定の期間、掲載されます。
これがいわゆるブラックリストに載ることを意味します。
この期間は、金融機関にお金の借り入れを申し込んだり、
保証人になる旨の手続きを踏んでも断られます。
中には自己破産しても融資をしてくれる金融機関もありますが、
取り立てが厳しいとか悪質な業者であるといったことが多いので避けた方が無難です。
仮に2回目の自己破産申立を行おうとしても7年間は法律上、
免責許可を受けることができません。
再び支払と取り立てに追われる日々が蘇ることのないよう注意したいところです。

 

3-3 管財事件での制約

その他としては管財事件の場合に言えることですが、
管財人の付いた破産者の場合は、居住制限や郵便物の転送といった制限が伴います。
これは破産者に一定の期間、
制限を加えることで財産等の調査を容易にするなどの目的があります。
免責決定を経るとこのような制限は解除されます。

 

3-4 資格制限

更に破産すると、色々な資格制限が出てきます。
例えば弁護士や司法書士、行政書士などのいわゆる士業は破産すると欠格となり、
登録しているとその抹消が行われます。
ただ免責決定が出ると再び登録が可能となります。
ところで、取締役や監査役等の会社の役員はどうなるのでしょうか?
かつては会社の役員は破産すると欠格となりましたが、
法改正に伴い、先の規定は削除されました。
ただ会社の役員と会社の契約関係は委任契約であり、
委任契約は破産すると契約そのものが終了します。
この場合、株主総会などで再度選任してもらうことで
役員であり続けることが可能となります。

 

4.終わりに

自己破産とは、言い換えれば再出発です。
今までの負担を減らし、再び未来に向けて前向きに動く機会を与えられるのです。
失うものも多いですが、
再び人生の土台を築いていくきっかけであって欲しいと思います。