自己破産すると生活はどう変わるの?

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1.はじめに

「5」や「0」の付くいわゆる五十日や月末が近づくと、
支払のことが気になってくる、
あそこは支払が遅れると直ぐ電話がかかってくるとか、
事業者であれば手形は無事落ちるのかなど、
気を揉むことが色々あることでしょう。
そのサイクルに追われていて、結局何をしているのかわからない、
いや負債は微増しているという皮肉な事態に陥っているかもしれません。
そうこうしているうちにやがてやって来る支払不能という事態。
それは法的整理の段階に入ったことを意味します。
では、自己破産をすると生活はどのように変わるのでしょうか?
ここでは、①破産申立前、②破産申立の手続き中、③免責決定後の3段階に分けて
見ていこうと思います。

 

2.破産申立前まで

 

2-1専門家の相談時に気をつけたいこと

法律事務所等に相談に行き、破算申立を裁判所に行うまでの段階を言います。
この段階では、もはや支払もままならない状態になっているのではないでしょうか。
法律専門家と委任契約を締結する際には、自身の状況をありのまま伝えて下さい。
収入がどれ位で負債がどれ位あるのか、
金融機関や取引先からの借入金だけでなく、
友人知人や親族からの借入金も隠さず伝えるようにして下さい。
破産するということは、支払ができない状態を指します。
そのような状態にも関わらず、一部の友人知人等にだけ返済しているようでは、
今後の債務整理の方針が大きく乱れる可能性があるからです。
場合によっては、裁判所に免責不許可事由ありと認定されることもあります。

 

2-2受任通知発送後
ここで委任契約を締結すると弁護士や司法書士は各債権者に受任通知を送ります。
受任通知には、以下のような内容が記載されています。
「依頼者が債務整理の段階に入った、取り立てを止めて欲しい」
この通知が各金融機関に届くと、督促等の連絡が止まります。
支払も一時的ではありますが、ストップとなりますので、
今までになかった平穏な時間を送れるかもしれません。
ただ、この期間はあくまで一時的です。
債務整理の方針が任意整理であれば支払の原資を作ることになりますし、
破産でも管財事件になるような場合であれば予納金等を捻出する必要があります。
なお、法律専門家と委任契約締結後の借入はしてはいけません。
もっとも電気・ガス・水道や電話代等のライフラインの支払は通常通りする必要があります。
これらが止まってしまっては、たちまち生活もままならなくなりますから。

 

3.破産申立の手続き中の場合

次に裁判手続き中を見ていくことにします。
これは裁判所に破産申立を行ってから免責決定を経るまでの段階を言います。
破産申立を行うと、管財事件か同時廃止かに振り分けられます。
以下、場合を分けて説明します。
なお、いずれの手続きを経る場合でも、
官報という国の発行する新聞には名前や住所が掲載されます。
一般の人が見ることはないのですが、
悪質な金融業者はこれを見てDM等を送ってくる場合があります。
注意して下さい。

 

3-1管財事件の場合 

管財事件とは、申立を行うと破産手続開始決定が出て管財人が選任される場合です。
破産者の財産が多い場合や、
自営業者などの場合は管財事件になるケースがほとんどです。
管財人は破産者の不動産や株式など金銭に換価できるものを調査していきます。
その後、債権者集会を経て金銭に換価したものを原資にして、
破産債権者に按分割合で配当します。
もし不動産や株式、その他預貯金等があると、
それらは破産財団に属することになり手放すことになります。

 

3-2制約があります
この場合、破産した人には一定の制約が課されます。
金銭的な負担としては20万円の予納金を納めなければいけません。
また居住が制限され郵便物が管財人の元に届くようになり、
手元に全ての郵便物が届かなくなります。これは財産隠し等を防ぐためのものです。
とはいえ、裁判所の許可があれば引っ越しは可能です。
同じように宿泊を伴う旅行も制約を受けますが、許可を受ければ可能です。
いずれも連絡がつく場所への移動であれば許可されるのが実情です。
郵便物の転送には気をつけて下さい。
破産に伴い口座引落から振込にするような場合では、
料金がいくらなのか、そもそも支払が送れているのかわからなくなります。
電気・ガス・水道・電話の利用ができなくなると困りますので、
管財人とマメに連絡を取るなどした方がよいでしょう。

 

3-3同時廃止の場合

次に同時廃止について見ていきます。
同時廃止とは破産手続きを止めるという意味です。
破産手続き開始決定と同時に出ることが多く、
ここで手続きが終了することになります。
管財人は選任されませんし、住居の制限や郵便物の転送などの制約もありません。
20万円という予納金も必要ありません。

 

4.免責決定後の場合

最後に免責決定後について見ていきます。
免責決定が出ると支払義務が無くなります。
債権者から請求されることも返済する必要もありません。
ただ金融機関が利用している信用情報機関には事故扱いで名前が載りますので、
数年間は融資を受けたりすることができなくなります。
破産手続き中は登録できなかった資格などは、
免責決定後に再度登録することが可能になります。

 

5.終わりに 

ここまで、破産すると生活はどのようになるのか?
申立前から申立後まで場面を分けて見てきました。
失うものは決して少なくないでしょうが、
心理的な負担等は大幅に軽減されることになると思います。
追い詰められて前が見えなくなる前に、一度検討されるのもありかと思います。