破産後にローンは組めますか?

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1.はじめに

ある自営業者がいました。
事業意欲が旺盛で次から次へと事業を展開し、
新しいことに積極的に挑戦していく人でした。
この方の唯一の大きな弱点は数字が苦手ということでした。
計算がとにかく大嫌い。
経理や会計は従業員か税理士に丸投げで決算書すら見たことのない人でした。
その数字に対する後ろ向きの姿勢が徐々に彼の事業を蝕んでいきました。
新規事業に挑むのは良いことですが、
新規事業への過大な投資がアダとなって既存の事業にも悪い影響が出てきたのです。
銀行から担保の積み増しを要求され、
金利の高い業者から借入などをするようになり、
結果として事業は行き詰まってしまいました。
彼が法律事務所の門を叩く頃には、既に不渡りが2回出ていました。
債務超過の状態であり、整理する方法としては破産しか道はありませんでした。
その後、破産申立をして管財人が選任された管財事件となり、
債権者集会等の手続きを経て免責決定が出て終結しました。
それでも、彼は事業意欲が削がれることはありませんでした。
「今回はやっちゃってしまったが、また再起したい。
破産してしまったのだけど、銀行からもう融資は受けられないのか?」
と相談してきたのです。
それでは、自己破産をしてもローンは組めるのでしょうか?

 

2.債務整理の種類

まず債務整理の種類を簡単に紹介します。
大きく分けて裁判所を介さない任意整理、
裁判所を介する民事再生、破産等の方法があります。
民事再生は再生計画の下で事業等を再生していく制度です。
破産は債務整理の最後の手段です。
支払不能の状態に陥っている場合に、その支払義務を無くす制度です。
その責任を失わしめる決定が免責決定で、この決定が出ると破産手続きは終了します。
 
3.融資は受けられるのか? 

破産申立をして免責決定が出ると、
負債の重圧は無くなりますが、信用情報機関には事故情報が載ります。
信用情報機関には銀行系・信販系・消費者金融系と主に3つありますが、
そのどれにも破産した旨の記録が残ります。
これがいわゆる「ブラックリストに載る」ということです。
信用情報機関に名前が載ると金融機関の融資は受けられませんし、
保証人になることもできません。
しかも、事故情報は少なくとも数年は残ります。
もっとも、この期間でも金銭を貸し付けてくれる業者は存在します。
とはいえ、このような業者は厳しい取り立てを行うなどが想定されますので、
融資を受けることは避けた方が得策でしょう。

 

4.融資が受けられないのなら、どうすべきか? 

さて、事業を再びしたい!この方はどう対処すべきなのでしょうか?
現実問題として金融機関からの融資は絶望的ですし、
会社を設立して保証人になるといっても、銀行等は拒否することでしょう。
「融資します」というDMは来ていたようですが、
いわゆるヤミ金の可能性が拭いきれません。
色々考えた結果、法人立ち上げ時の顧問として動くことを決めたようです。
共同パートナーを募る方法もありましたが、
片方に破産経歴があるとなると融資を受けるのは難しいでしょう。
またパートナーとの主導権争いが起こらないとも限りません。
今までの経験を活かして、顧問として事業の行く末を見ていく、
これが現実的な方法だろうと考えるに至ったようです。

 

5.終わりに 

破産後にローンを組む、これは残念ながら現実的には厳しいです。
金融機関としては、そのような人に融資はできないというのが現実です。
一度破産に至った経緯を振り返って見て下さい。
そこには、この残念な結果の原因がどこかにあるはずです。
それと向き合うのは大変勇気が要ることでしょう。
でも振り返らないと、再びこれまでのような悪夢が蘇ることだってありうるのです。
とはいえ信用情報機関に載ると未来永劫、その記録が消えないわけではありません。
過去の自分の言動を思い起こして破産に至るまでの経緯を分析・反省していたら、
いつの間にかその数年という歳月が過ぎているのかもしれません。