破産 友達や会社からの借入がある場合

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1.はじめに
新型コロナの影響が徐々に経済面で出始めています。
観光客を当て込んだ観光業界にまず打撃を与え、続いて飲食関係に。
その他の業界にも大きな影響が出てきています。
リーマンショックの時にも色々ありましたが、
今後は景気の悪化とともに、破産申立の件数が増えていくような気がします。
かつては個人の債務整理で
消費者金融に借入があって支払が立ち行かなくなった時は、
利息の再計算をした上で過払金があれば返してもらい、
その過払金を原資に残債務を返済するという方法が可能でした。
ですが、それも今は昔の話。
法律改正で上限金利が引き下げられたので、
以前のような債務整理は難しくなったと言っていいでしょう。

 

2-1 友人や会社に借入金がある場合
ところで、一概には言えませんが、借入には順序があるように思えます。
最初は銀行から融資を受け、
続いて信販会社、その後に消費者金融が来て最後に友人知人から借金する、
このようなサイクルがあって、
法的整理に入る人が多いのではないかという気がします。
そして破産申立するとなると債権者はどれ位いるのかを把握しなければなりません。
裁判所に提出する書類には、
債権者の名前と住所などを書かなければいけないものがあるからです。
銀行や信販会社、消費者金融は当然として、
友人知人からの借金や会社の借金であっても、
ここに名前を記載しなければならないのでしょうか?


2-2 私の知人の場合

というのも、私の知人で今まさに破産申立を考えているのが居ました。
投資で損をしてその穴埋めにカードを利用していたようですが、
徐々にその金額が膨らみ続け、にっちもさっちも行かなくなったようです。
元は信販会社のキャッシングを利用していましたが、上限に達し、
ついには知り合いにも借金をしたとのことです。
ご多分に漏れず、私もその友人に少しではありますが、お金を貸していました。
破産申立をするとどうなるのか、
友人なりに調べたようでお金を貸していた友人達にも裁判所から郵便物が届き、
場合によっては債権者集会なる所に出向くことが求められるとネットで見て、
恥の上塗りになるから伏せておきたいというのがその理由です。
そのような事情を裁判所は汲んでくれるのか?ということです。

3-1 破産申立の意味

まず破産手続きについて簡単に見ていきます。
破産申立をすると、同時廃止か管財か大きく手続きが分かれます。
管財は破産管財人が就任して破産者の財産を調査し、
金銭に換価して各債権者に按分で配当していく手続きです。
その際、債権者集会を開いて債権者や裁判所に事情を説明するという機会があります。
友人が言う債権者集会とはこのことを言っていたのでしょう。
次に同時廃止とは、
破産手続き開始決定と同時に破産手続きをそこで止めるということです。
法律の建前上、破産は管財が原則なのですが、
個人のカード破産等の大半がこの同時廃止で処理されているようです。
破産は申立をした人の財産で
総債務の支払ができないときに認められる究極的な選択肢です。
ですから、財産の額と抱えている債務の額を正確に把握することが
裁判所としては重要な課題となります。
それゆえ、破産申立書の中に債権者一覧表の作成が求められ、
正確な書類の提出が求められるのです。

3-2 一部の債権者を伏せた場合

それでは、債権者一覧表の中に友人や会社の借入金を除外した形で
破産申立を行った場合はどうなるのでしょうか?
この場合、破産債権者を一部隠して裁判所に書類を提出した形になりますので、
偏頗(へんぱ)弁済として後から否認されたり、
免責不許可事由として免責決定が認められないリスクを伴います。
破産申立の究極の目標は免責決定を得ることです。
破産申立をしただけでは債務の責任からは解放されず、
免責決定を得ることで債務の重圧から逃れられるのです。
これが認められないのでは、一大決心をした意味がないに等しいでしょう。
さらに、裁判所に提出する書類の中には申立に至った経緯を説明する書類や、
裁判所で面接を受ける審尋という手続きがあります。
仮に債権者一覧表の中に書いていなかったとしても、
この中であぶり出されることもあるかもしれません。
このような場合、裁判所の印象が悪くなり、
手続きに支障が出てしまうことにもなりかねません。

3-3 知人はどうしたのか?

私の知人に債権者リストの重要性と名前を伏せた時のリスクについて説明しました。
私にしても名前を伏せてもらって、
そっと返してくれた方がありがたいのですが、
後で面倒な手続きに巻き込まれるのはまっぴらごめんです。
知人は「わかった」と言って帰って行きました。
その後、法律事務所から債務整理の開始通知が届き、
数ヶ月後には裁判所から郵便物が届きました。
家族は法律事務所や裁判所から私宛に次々と郵便物が届いたので
びっくりしてましたが、
事情を説明すると理解してくれました。
知人は同時廃止・免責決定を経て債務整理に終止符を打ったようです。
ただ、会社には居づらくなって退職したと後から聞きました。

4.この場面で人情は慎みたい

破産とは再生のための最後の手段となります。
友人や会社には隠したいという気持ちはわかりますが、
裁判所に認めてもらうためには客観的な状況を伝えなければなりません。
そのために免責という大きな目的を見失っては元も子もないのです。
実際、このように一部の債権者を隠すことがまかり通るようになれば
一部の債権者が「ウチは黙っててくれ」とごり押しすることが容易に想像できます。
この場面では人情は慎んでおきたいところです。