債権者集会の実際

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1.はじめに
2020年はコロナの影響で、株主総会や諸々の総会の開催に
苦労をしているとの話をよく耳にします。
株主総会では、通常は株主からの質問対策に時間を費やすのでしょうが、
今年はクラスターが発生しないように
どう総会を運営すべきなのかについて多くの検討をしたことでしょう。
ところで、破産手続にも多くの人が一堂に集まる場合があります。
それは債権者集会というものです。
では債権者集会とは、どのようなものなのかについて今回は見ていきます。

2.管財事件で債権者集会は開かれる
まず破産手続は大きく2つに分かれます。
一つは同時廃止という手続です。
これは破産申立を行い、破産手続開始決定が出ると同時に出されることが多いです。
「廃止」とは手続を止めることです。
通常は破産手続をするにも費用が必要なのですが、
その費用もカバーできないような事件に対して出されます。
もう一つは管財事件です。
これは破産手続開始決定と同時に管財人が選任されるパターンです。
破産申立をした人が経営者である場合、
不動産や高額の財産を有していた場合の他に、
借金の責任から解放される免責決定を出すのに支障がある場合に
管財人が選任されます
管財人が選任されると、破産者の所有していた財産の調査等が行われて、
それらが金銭に換価されて各債権者に按分割合で配当が行われます。
その配当が行われる前に債権者集会は開かれます

3.債権者集会とは
債権者集会では、管財人が破産者の財産と収支の報告が行われます。
そして破産財団を構成するような財産がない場合には、
免責をさせるかどうかについての申述が行われます。
他方で破産財団を構成するような財産がある場合には、
配当の許可が出されて、各債権者への配当が行われます。
特段の問題がなければ裁判官は、この集会を終結させます。
通常の裁判は憲法上公開という形が保障されていますが、
この債権者集会は裁判所の法廷で行われるものの、
誰でも見られるものではありません
裁判官と管財人、破産申立をした人、そして債権者など
一部の限られた人のみが出席できます。

4-1 実際の債権者集会
さて債権者集会と聞いて、どのように思われますか?
多くの債権者がヤジや怒号を飛ばす中で、
破産した人が泣きわめきながら質問に対する説明を行う、
そんなイメージがどうしてもつきまといます。
そんな集会もあるのかもしれません。
ところが、実際には債権者のほとんどは出席しません
来るとしたら、金融機関のようなプロの債権者ではなく、
場慣れしていない一般の債権者であることがほとんどです。
それも何時間にもわたって審理されるのではなく、
ものの5分~10分で集会は終わります

4-2 あれ、何だったの?
実際に破産した個人の方から聞いた話です。
債権者集会は破産手続を選択した時と同じくらいに緊張して臨んだそうですが、
大口の金融機関系の債権者は全然来て居らず、
友人知人という債権者が場の隅っこの方に座っていてあっけなく終わったそうです。
よくよく考えてみれば、金融機関も債権者集会に出て色々意見を出すよりも、
他の案件の回収対応に忙しくてかまってられないというところなのでしょう
広い法廷に通されて、ものの数分で終わってしまい、
「あれ、何だったの?」と思ったそうです。
なお、その債権者集会が終わって程なくして免責決定が出たとのことでした。

5.終わりに
マスコミを賑わすような社会的関心の高いものは、
このようにシャンシャンと終わることはないのかもしれません。
また色々な人からお金を借りて倒産したような場合では、
債権者も多数いるでしょうから、
すんなりとは集会も終わらないことでしょう。
でも、債権者集会は破産して最終的な免責を得るための
儀式のようなものなのかもしれません。
倒産した会社や個人からの話を聞いてると、そんな感覚を持ってしまいます。