1.はじめに
携帯電話の請求書、
ポイントカードを作った店からのダイレクトメール、
郵便ポストを開けると色んな郵便物が入っています。
その他にも正月であれば年賀状、
夏の梅雨明けシーズンなら暑中見舞いが届くこともあります。
これらはご存じの通り、
郵便物を出すと誰の介入も受けずに宛先の人に届くことになっています。
郵便法でそう書いてあるのかは知りませんが、
憲法の定める通信の秘密などが具体化したものと、自分は理解しています。
ところが、この郵便物が届かなくなる場合があります。
例えば、成年被後見人になった場合は、
後見人が成年被後見人の状況を把握するために、
郵便物の転送届を出している場合などです。
それでは破産した場合にも、このような制約を受けるのでしょうか?
ここでは破産手続と郵便物の関係について見ていきます。
2.債務整理を依頼した場合
まず債務整理を依頼する前であれば、郵便物は問題なく宛先の所に届きます。
もちろん転居など何らかの事情のないのが前提です。
次に債務整理を専門家に依頼した段階ですが、
これも問題なく依頼者のところに郵便物が届きます。
ただ債務整理を専門家に依頼した場合は、
各債権者は書類を弁護士や司法書士といった専門家に送付することになります。
依頼者と委任契約を結んで債務の整理を依頼したわけですから、
言い換えれば窓口が変わることになります。
それでも債権者から依頼者に郵便物が届くのであれば、
ひょっとしたら弁護士等への伝え漏れがあったのかもしれません。
特に破産手続に進む方向なのに、
伝えてない債権者がいる場合は、
その債権者の債務だけ免責されないなど不都合が生じるので、
必ず専門家に伝えて下さい。
3-1 破産した場合(同時廃止の場合)
それでは債務整理の方針が破産になった場合は、
破産者宛の郵便物はどのような扱いになるのでしょうか?
ここでは大きく2つに分かれます。
まず破産申立をして破産手続開始決定が出るのと同時に同時廃止になった場合です。
同時廃止とは「手続を止める」という意味で、
その決定が出るのと同時に破産手続は終了します。
この場合は、破産した人に郵便物は問題なく届きます。
よく聞く話では、破産手続開始決定が出るなどのタイミングで
ヤミ金からDMがよく届きます。
官報に破産した人の名前が載るので、
その情報をキャッチしてDMを送りつけてくるのです。
これに手を出すと地獄が待っているので、そのまま破ってポイしましょう。
3-2 破産した場合(管財事件の場合)
次に破産手続開始決定と同時に管財人が選任された場合です。
管財人が選任されるのは不動産や高額な財産がある場合や、
破産した者が法人や自営業者などの場合です。
この場合は、郵便物が管財人の元に届くようになり、
破産した人のところには全ての郵便物が届かなくなります。
携帯電話や電気料金の請求書から、
年賀状や友人知人からの手紙を含めて全て管財人の元に届きます。
これは何故かと言うと、管財人は破産した人の概要、
もっと具体的に言うと財産や債務の状況を把握するためです。
もちろん破産申立の際には色々な書類が求められ、
そこには財産の状況を事細かに記載しなければなりません。
ですが、残念なことに一定の割合で財産隠しがあるのも事実です。
そのために管財人が子細を調べるために郵便物の転送が行われているのです。
3-3 「郵便物が届かなくなった」
私が司法書士事務所に勤めているときに、
破産申立をして管財事件になり、
「郵便物が届かなくなった」という電話を受けたことがありました。
親方の伝達ミスが原因でした。
管財人の元に届いた携帯電話の請求書があり、
引落の手続ができなかったので
コンビニで支払をしなければならないところ請求書が届かず、
困って電話をしてきたのでした。
危うく延滞になり唯一の連絡手段である携帯電話が止まるところでした・・。
4.終わりに
最近といっても、ネットが普及して久しいですが、
郵便物だけで全てをカバーできるのかなと思います。
今ではネットのサイトで色んな登録をしています。
それらの中には財産的価値のあるものも多々あるでしょう。
人によっては海外に財産を保有している場合もあります。
このようなモノや情報を郵便物だけで補足するのは限界ではないか、
さりとてその情報も含めて管財人に追跡調査を求めると
憲法上の問題が生じないのか、
そこには難しい問題が潜んでいるように思えます。