債権回収に王道はあるのか?

f:id:zeirishiegg:20200812170209j:plain



1.はじめに
倒産などの話を聞いていると、
必ず出てくる質問の一つに
「確実に売掛金を回収できる方法を教えて下さい」というのがあります。
事業を経営する者としては、売掛金の回収は大切な仕事です。
ですが、経営に黄色信号が点灯した所からの回収に王道はなく、
その場に即した回収方法しかないように思えます。
もし絶対無敵の回収方法があるのなら、
プロである金融機関がそれを実践しているでしょうし、
貸倒れという言葉は存在しないでしょう。
とはいうものの、売掛金を回収できないと
自身の経営状態に影を落とすのも事実です。
体力のある会社であればいいのですが、
他に払うものがあったりすると回収できない金額によっては
共倒れになる可能性があります。
ここでは、考えられる回収方法を見ていくとします。

2.期日管理を徹底する
まず、基本的なことですが請求書を作成して、
相手に金額を請求するときは支払の期日を決めて下さい。
「そんなこと・・・」と思われるかもしれません。
ところが、期日の管理というものは意外とできないものですし、
大切なことなのです。
期日を設定されると設定された方としては、その日にちを意識するものです。
それを最初からスルーしてしまう人はビジネスパーソンとしては失格でしょう。
ですので、その期日内に支払がない場合には、さっそく支払の依頼を行います。
この時間的頻度が短くなればなるほど回収率は高くなります。
もしこの期日がない場合は、
ある場合に比べてどうしても時間がかかる傾向にあります。

3.準消費貸借とは
次に売掛金等が特定の所にたまっている場合があります。
先ほどの期日管理を徹底するのも一つの方法ですが、
それだけで回収するのは難しい場合もあります。
このような場合は、準消費貸借にする方法があります。
準消費貸借とは、金銭の貸し借り以外の事情で債権債務が発生している場合に
金銭の貸し借りがあったと契約形態を変えることをいいます。
個々の売掛金債権を別々に管理するのは思った以上に大変です。
これを金銭の貸し借りがあったとする準消費貸借にすると、
その管理負担も軽くなりますし、時効の面でも大きなメリットを受けます。


4.公正証書の使い方
また直接的なアプローチになりますが、契約書を公正証書にすることも効果的です。
金銭等の貸し借りについての契約を公正証書にすると、
もし相手方が不履行をした場合は裁判にかけることなく、
即時に強制執行が可能です。
もし通常の契約で債権を法的に回収しようとすると裁判を起こして判決を取り、
それから強制執行にかけるという長い手順が必要となります。
公正証書は判決という時間的なロスを大幅に圧縮できるので、
回収という面から言うと効果は大きいでしょう。
ただ、執行が可能なのは金銭消費貸借に限定されるので、
売買契約や請負契約を公正証書にしても債権の即執行には意味がありません。
先ほど紹介した準消費貸借を公正証書にするのは、その意味でも実益は大きいです。

5.担保を取る
他には担保をとる方法があります。
担保としては保証人のような人的担保と不動産等に設定する物的担保があります。
順に概略を見ていきます。

5-1 保証人を立てる
債権回収の代表格となるのが保証人を立てる方法です。
債務者の支払が厳しい場合には保証人から回収をするのです。
保証人には通常の保証人と連帯保証人がありますが、
債権回収の観点でいうと連帯保証人にするべきです。
ただ事業資金で保証人を立てる場合は、
公正証書にするなど一定の制約があります。
また保証契約を結ぶ場合は必ず書面でしなければいけません。

5-2 不動産に担保をつける
次に物的担保です。抵当権が代表格ですが、
価値の高い不動産には、
既に金融機関の先順位担保が付いていることがほとんどですから、
後順位で抵当権をつけるメリットはあまりないように思います。
債務者が所有する動産や債権に担保を設定して登記をする方法があります。
この場合、不動産ほど確実な資料があるわけではありませんから、
必ず帳簿などで現存するのかを確認した上で担保を設定するようにしましょう。


6.終わりに
誰しも悪意を持って払わないのではありません。
払えない人のほとんどが払いたいけれど払えないのです。
そこから回収するのは並大抵のことではありませんし、
時に情が入る場合もあります。
しかし、客観的に自身の置かれた現状を考えて、
「いま自分がしなければいけない大切なことは?」を考えて下さい。
厳しい局面もありますが、生きるためには避けて通れない道のりなのです。