粉飾決算事始め

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1.はじめに
「えっ、あの会社が!?」
大手企業の経営破綻のニュースを見ると、いつも驚かされます。
中には、つい最近までテレビでCMを流していたり、
あるいは大物芸能人を使ったキャンペーンを展開していたりなど、
破綻とは無縁のところで活躍していると思うところが、
急転直下でそうなるのですから無理もないでしょう。
破綻する要因は多々あります。
世の中の景気に左右される場合もあれば、
何かの不祥事を起こして社会的信用を失ったりする場合もあります。
その他にも帳簿上の数字をごまかし続けて
来たるべき時が来たという場合もあります。
粉飾決算でごまかし続けていたものの、
もうどうすることもできなくなったようなケースです。
ここではよく耳にする粉飾決算とはどのようなものなのか、
講学的な話になるかもしれませんが、
その手口について紹介したいと思います。

2.粉飾の動機
まず会社は年に1回は決算をしなければなりません。
組織が大きくなればなるほどお金の出入りが激しくなりますが、
一度その出入りをチェックして儲かったか儲かってないのかなどを精査し、
税金の申告等を行います。
会社の決算は公告が義務づけられています。
上場している会社については、
情報開示が強く求められるので
会計関係など色々な情報を開示する必要があります。
それが投資の判断材料となり、社会的信用へと繋がっていきます。
さて、会社が実は儲かっていない、
言わば赤字であるのに黒字を装ったらどうなるのでしょうか?
黒字を装わなければならない理由は色々考えられます。
例えば、銀行の融資が止められる、
株主から経営陣に責任追及がされる、
業種によっては赤字の会社では公共工事を受注できない、など色々です。
そのために、会社は本来してはいけないことに手を染めてしまうのです。
次に、その手口について見ていきましょう。

3-1 粉飾はどのように行われるか
まず考えられるのが帳簿の水増しです。
例えば架空の売上をあげる、在庫を増やす、
そして実際かかっている経費よりも少なく計上するといった方法があります。
その他にも企業再編を巧みに使った方法もあります。

3-2 合併
その一つが儲かっている会社と合併する方法があります。
2005年の会社法施行まで、
会社が合併する場合は債務超過の会社と合併することはできませんでした。
ところが、現行法では債務超過の会社との合併も可能となっています。
体力のある企業と合併すれば、
そのパワーを吸い取ってしまうもののマイナスという数字が消えてしまうので、
本来見せたくない数字を闇に葬ることができます。
もっとも赤字を作る部分を改善しない限りは、
やがて負の部分に引きずられていくことになります。

3-3 会社分割
次に、会社を分割する方法があります。
例えば、製造部門と流通部門、ホテル部門など企業によっては
色々な事業を展開していて、
それが会社の収益を支えているのは場合があります。
中には黒字部門と赤字部門のある場合が考えられるでしょう。
そのような場合に分社化して赤字の部門を別会社に切り離して、
黒字の部門を存続させるというやり方です。
専門用語では会社分割と言います。
この方法は、企業の再生のためには非常に有用な方法ですが、
株主や会社の債権者が納得できないやり方ですと、
後で訴訟になるリスクが高まります。
現に会社分割制度を悪用した行為だとして訴えられたケースがありました。

4.粉飾し続けていると
では、このように色々なやり方で粉飾決算をしているとどうなるのでしょうか?
儲かっているように見えても実際は火の車状態なのですから、
いずれは身動きが取れなくなり、
最悪の場合は経営破綻へとつながります。
また経営陣は刑事責任を問われます。
現状よりもよく見せたい、このような気持ちは
会社でなくても誰にでもあるものです。
そして最初のきっかけは小さなウソなのかもしれません。
ですが、そのウソを取り繕うためにまたウソを重ねていくと、
その規模はとてつもなく大きなものとなります。
その会計版が粉飾決算なのです。

5.終わりに
以前、税理士と話しているときに
初めて対面する会社の決算書を見るときは
決算書は粉飾されているものと思って目を通すと聞いたことがありました。
規模の大小はあれど、どこにでもあるものかもしれません。
何年か前の新聞で
「数字はウソをつかないが、ウソつきは数字を使う」という言葉がありました。
数字を扱う者の端くれとして、
数字を過信せず、また加担せず、気を引き締めたいところです。