使い道の定まらない不動産を相続した場合

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1.はじめに
相続とは一切の権利義務を承継する制度です。
これはいるけど、あれはいらないという注文は遺産分割協議で相続人全員の合意がない限りはできません。
また知っている知らないに関わらず、遺産を承継します。
もし相続人が1人であるならば、遺産分割という概念は発生しませんから、その全てを背負うことになるのです。
それがたとえ遠方にある不動産であってもです。
ここでは、被相続人が所有していた遠方の不動産、または使い道の決まっていない不動産を引き継いだ場合を見ていきましょう。

2.農地や山林を相続した場合
まず相続した不動産が農地や山林であった場合について見ていきます。
農地や山林を相続した場合は、相続登記と同時に不動産所在地の市役所等に相続に伴う届け出を提出します。
各自治体によって必要書類が違う場合がありますので、必要書類を確認してから提出します。
なお、この届け出を提出しない場合は過料に処せられます。

3.使用方法の決まってない不動産を相続した場合
続いて、相続した不動産について見ていきます。
今後も使い道が決まっている不動産であれば、その通りに使用していくことになります。
他方、使い道が決まっていない不動産は早めに処分する方が無難です。
第三者に賃借や売却したり、あるい相続した不動産が空き家である場合は解体するなどです。
何故かというと、相続した不動産が放置状態であれば雑草等が生い茂り、近隣に迷惑が及びます。
空き家であれば倒壊して近隣や通行人に損害が発生する蓋然性が高まります。
損害賠償請求や妨害排除の訴えといった訴訟リスクを抑えるために、早めに策を打つのです。
所有者には無過失責任があり、損害賠償請求等を受けた場合は厳しい立場に立たされることが多いのが大きな理由です。


4.不動産の国庫帰属制度
近年は相続登記の未了問題が社会問題として表面化し、誰が所有者かわからない不動産が増加しています。
このような情勢を受けて、相続登記の義務化と相続により取得した不動産の国庫帰属制度が法改正を経て導入されようとしています。
2023年の4月頃に施行されるのでは、と思われます。
ただ不要な不動産を国が全て受け容れてくれるわけではありません。
土地が帰属対象となりますが、その土地に担保がない、建物がない、土壌が汚染されてないなどいくつかの要件をクリアする必要があります。
実際のところ相続人不存在で被相続人に不動産があった場合でも、そのまま国庫に帰属することは少ないです。
多くは換価してその金銭が国庫に帰属する形が多くなっています。
他の制度のそのような運用方針から考えると、制度はできても不要な不動産の国庫への帰属は中々ハードルが高いのではないかと思われます。

5.終わりに
ここまで相続した不動産について見てきました。

新しい制度の運用が近々スタートしますが、それで問題が解決するとは思えません。
訴訟リスクを抑えるためにも、用途の決まってない不動産を早く処分するのが王道ではないかと思います。