租税債権に気をつけよう

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1.埋もれている租税債権
会社や個人事業主を取り巻く資金繰りの状況が悪化してくると、
返済の色々な面で悪い影響が出てきます。
支払先としては銀行、仕入れ先、従業員、
その他税金など多方面に渡ることでしょう。
そして、たいていの事業者は督促の厳しい所から支払っていきます
無担保で金銭の貸し付けを行っている業者は
貸し倒れになるリスクが有担保の業者よりも高いので、
督促が厳しくなるのは自然の流れでしょう。
そしてやはり支払う側も人間ですので、うるさく言われたくないから、
そういう所から支払っていくのです。
では、先ほど挙げた債権者の中で、
租税は他の債権者よりも一見「大人しく」思えます。
それでは租税債権とはどのようなものなのでしょうか、
ここではその点について見ていきます。

 

2.租税債権の特有性(執行面)
通常、私人間の権利関係は自力救済が禁止されています。
これを認めると力の強い者が弱い者を力で駆逐することになってしまうからです。
ですので、たとえ貸金という権利があるとしても
自力で差押等をすることはできず、一度裁判にかけて判決を取り、
その債務名義で債務者の財産に差押をするという手続を取っていくことになります
他方、租税債権についてですが、
このように裁判手続を踏んで差押をかける必要はありません。
租税債権は即座に債務者の財産に執行をかけることが可能となっています

 

3.租税債権の特有性(破産面)
では、破産手続に入った場合はどうなるのでしょうか?
この点、民事上の債権も租税債権も破産債権となる点は同じです
破産債権とは、破産手続開始前の原因に基づいて生じた財産上の請求権であり、
財団債権に該当しないもののことを言います。
ただ私法上の債権とは異なり、
租税債権は優先的に扱われるもの・劣後して扱われるものの二つに分かれます
破産手続は全ての破産者の財産を金銭に換価して配当を行い免責する制度ですが、
この配当において他の破産債権より優先的に配当を受ける債権が
租税の中には存在するのです

 

4.租税債権の特有性(免責後)
そして破産手続が終結して免責決定が出たとします。
個人事業主であれば免責決定が出ると、
破産債権者から請求を受けることはありません
ただし所得税や贈与税等の国税や国民健康保険の保険料、国民年金の保険料、
そして固定資産税などの、いわゆる税金は、
たとえ破産手続が終わり免責決定を得たとしても免責されることはありません
依然として支払の義務が残ることになります。
なお、法人は法人という主体が消滅するので、租税債権の支払義務も消滅します。

 

5.終わりに
債務整理を考えていく上で、
まず考えるのが辛い督促と返済の日々からの解放でしょう。
確かに債務整理を選択し、その方針が破産ですと
多くの債権で免責を受けることになります。
ところが、執行面や破産手続の面、
免責後の局面において租税債権は私人間の債権と異なる扱いになっています。
特に個人の免責決定後も、なお負担しなければならない点は要注意です。
この租税債権の扱いには注意して下さい。