むしばまれていく自尊心

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1.はじめに
人は大なり小なり夢があります。
夢を実現するためには自分を信じ、
時には我慢して辛いことなどを乗り越えていく場面が出てきます。
そのときに自分の力を信じ切ることができれば、
夢の実現への大きな原動力となるでしょう。
ところで借金を重ねる人は本当に愚かなのでしょうか?
借金を重ねるといわゆる多重債務となり、
借金を返せなくなって財産を差し押さえられ、
場合によっては自己破産する、
そういう負のスパイラルに陥ることがあります。
これは本当にレアなケースなのでしょうか?
私が思うに、その入り口は誰にでもあると思います。
私にもあなたにも。
今回は借金でがんじがらめになると、
人はどうなっていくのかについて見ていきます。


2.バブルがはじけるまで
私の身近であったことです。話は1980年頃に遡ります。
まだバブルの始まる前、
以前にも書きましたが私の祖父は
先祖から所有していた不動産を元に不動産業をしていました。
それは所有物件を利用した、
いわゆる身の丈にあったものだったと思ってます。
風向きが変わるのは父が経営するようになった頃。
時代はバブルを迎えます。
「不動産は下がらない」皆信じて疑わなかった頃に、
銀行から融資の話が持ち込まれます。
当初はその気もなかった父ですが、
何度も言われるうちに気が変わり
所有不動産を担保に新しい物件を購入して行きました。
時価は上がり、このときは絶頂期だったと思います。
しかし、そのような高揚感に浸れる時は一瞬でした。
バブルがはじけて時価は下がり、担保割れするようになったのです。
所有不動産と有り金を全て出しても返せそうにない負債が残りました。
でも、その頃はまだいずれ不動産は上がるとの楽観的な思いがありました。

 

3.風向きの変わった90年代半ば
歯車が狂うのは1990年代半ば、
毎週のように金融機関が倒産した頃からです。
銀行も回収の攻勢を強めてきました。
返済金額が足らず、父は事業者金融に手を出し始めたのです。
最初は「つなぎ」のつもりでしたが、
金利の高い業者から借りた結果、結局負債総額を増やすことになります。
こうなってくると人は徐々に周りが見えてこなくなります。
目の前のことで精一杯になるのです。
借金はギャンブルで増やした、
そういう人もいますが多くは真面目に返していこうとする人です。
返済のために無理を重ねて身動きがとれなくなるところまで進んでしまうのです。
その結果、神経をすり減らし眠れない日々を過ごすことになります。
また当時の消費者金融は返せなくなると一日に何回も電話をかけてきました。
これが更に自己嫌悪へとつながり、自尊心をすり減らしていきます。
その結果、心の病を負ったり、
場合によっては自らの命を絶ってしまうことにつながるのです。

 

4.終わりに
債務整理の相談を受けると、
今までの緊張感がはじけてワッと泣いてしまう人が多いものです。
数多の修羅場を経験し自分すら信じられなくなっていたのに、
第三者である法律家が相談者の悩みに向き合ってもらえて、
心の安堵感を得たからなのでしょう。
父は先祖に申し訳ない、この苦難を乗り越えたら何とかなると必死でしたが、
急に体が動かなくなり、
そこで第三者である法律家が介入して事態は沈静化しました。
当時あったもののほとんどは他人に渡ってしまいましたが、
今では落ち着いて生活しています。
このように借金を重ねてしまう入口は人によってバラバラです。
気がつくとはまり込んでいて心身を害することもあります。
歯車は突然狂うことがあります。
傷口を広げないよう、
いま本当に苦しい方は立ち止まる必要があるのではないかな、と思います。