少し前ですが、自己破産後に行政書士試験を受験し、現在は行政書士になられている方のライフストーリーを読む機会がありました。ちなみに行政書士は「破産者で復権をえない者」は登録ができませんので、試験合格だけではなく復権を得るまでのご苦労もあったことでしょう。
個人的には行政書士試験受験より、税理士試験のほうが魅力を感じています。税理士試験に全科目合格したら、そのあとに行政書士試験を受験したいです。
自分の周りには「士業になるより会社に勤めたほうがいい」という人のほうが多く、会社に役員として残り、数年は役員報酬をもらって…と計画している人も何名かいらっしゃいます。さて、「自己破産すると、会社員になれても法人役員にはなれない」という話も聞きますが、これは本当でしょうか。
1.取締役になれないのは?
会社役員というと、取締役をさす場合が多いのですが、取締役になれないのはだれか、お話しします。
・法人
まあ当然といえば当然ですね。
・成年被後見人、被保佐人など
判断能力が十分ではなく、サポートが必要な方々です。もし取締役就任後、成年被後見人や被保佐人になると、取締役の地位を失ってしまいます。
長くなるので割合しますが、会社法、その他の一定法律に関する罪を犯し、刑に処せられ執行を終わってから2年が経たない人なども該当します。
取締役になれない人の要件は、会社法で決められていますが、破産者は含まれませんので、自己破産をしていても、取締役になること自体は可能です。
国は再チャレンジを応援しようというという考え方をしています。
2.取締役になった後、自己破産するとどうなるのか
さて、逆のパターンはどうでしょうか?
取締役に就任後、自己破産してしまった場合についてお話します。今度は民法のルールが適用されます。民法では、取締役は会社と委任契約を結んでいると考えており、民法653条では、委任契約の終了について規定しています。
- 委任者、受任者どちらかの死亡
- どちらかが後見開始の審判を受けた場合
- どちらかが破産手続開始の決定を受けた場合
よって取締役就任後に自己破産した場合、取締役を退任することとなります。
3.取締役にはなれても一定の制限があるもの
さて、会社法のルールだけを見れば、破産者でも会社の取締役に就任すること自体は可能です。しかし別の法律で制限を受けるものがあることも忘れてはいけません。
例えば、宅地建物取引業の許可などは、宅地建物取引業法のルールも守らなければいけません。宅地建物取引業法では、「破産し復権を得ない者」は欠格要件に該当してしまい、宅地建物取引業許可の取得ができなくなります。
もし、会社の取締役の一人が自己破産しているような場合、その人を取締役から外すことになるかもしれません。破産者であっても取締役にはなれますが、別の法律で制限されていないか、確認したほうが良いでしょう。