計算書類から黄色信号をキャッチする

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1.はじめに
事業をしていくと、継続的に末永く特定の人と仕事をしていきたいと思うものです。
そのようなパートナーがどれだけいるのかによって収入の目処が立ちますし、
ともすれば事業の成功か失敗も決まります。
ですが、長い月日を経ていくうちに事情が変わり、
うまくは行かなくなる場合があります。
例えば納入する商品や支払が遅れるような場合です。
一時的な遅れであれば問題ないのですが、それが恒常的になってくると問題です。
得意先である相手方の支払の遅れが常態化しているような場合は、
大抵は資金繰りがうまく行っていないのでしょう。
これが最悪の形となって現れてくるのが倒産です。
このような取引先の危険な兆候をどのように見分ければ良いのでしょうか?
ここでは会計の書類から現れる黄色サインについて見ていきたいと思います。

2.損益計算書と貸借対照表
会計の書類として代表的なものは、
損益計算書(PL)や貸借対照表(BS)があります。
他にはキャッシュフロー計算書がありますが、
代表的なものは先の損益計算書と貸借対照表の2つですので、
ここではこの2つについて見ていきます。

3.損益計算書とは
損益計算書は会社の収益を数値化したものです。
具体的に言うと「会社は儲かったのか」が一目でわかるようになっています。
まずは損益計算書の一番下の数字を見て下さい。
ここが+であれば利益が出ていて-であれば赤字ということになります。
次にその会社がどこで儲かったのかを見ていきます。
本業で儲けが出ている場合は売上総利益等の母体が大きくなります。
逆に本業で利益が出ていないのに、利益が出ている場合はどうなのか?
こちらの方が気になるところです。
例えば本業でない何かで収益が出ている場合は、経常利益の部分が大きくなります。
営業利益も経常利益も出ていないのに利益が出ている場合は、
特別利益の項目をチェックして下さい。
不動産を売るなど特別なことをして収益を出している場合には、
ここが膨れあがります。
一般に本業で利益が出ていないのに黒字を出してる場合は、
この部分で数値に変化が現れます。
利益を出しているとしてどこで利益を出しているのか、
可能であれば過去数年分の資料を揃えて分析してみるのもいいでしょう。

4.貸借対照表とは
次に、貸借対照表について見ていきます。
貸借対照表は会社の資産と負債等が項目別に割り振られています。
上部が金銭等の流動資産(負債)であり、
下の方に行くほど動かしにくい固定的な資産(負債)になります。
細かく書いていくと、それだけで一冊の本になるのですが、
注目したいところは、流動資産がどれだけあるのかということです。
ここの数値が高いということは現金が多いということですから、
支払が容易ということになります。
いくら資産が多くても流動資産が少なくて固定資産が多い場合は、
現金化しにくいものを多く保有していることですから、
支払はそれだけ遅くなることを意味します。
また在庫が多い場合は棚卸し資産の所に数値として表れます。
棚卸し資産は資産ですが、これから販売して現金化するものであり、
商品によっては現金化に時間がかかるものです。
このように資産が多いと思っても現金が多いのか、
固定資産が多いのかによって、その取引先の資産状況は大きく変わってきます。
単に資産の欄の数字を眺めるのではなく、
この辺りのポイントを踏まえて計算書類を見ていきたいところです。

5.正確な数値はどちらの書類に現れる?
なお一般的には、貸借対照表は見にくくて
損益計算書は見やすいものと言われています。
確かに損益計算書の方が理解もしやすいでしょう。
ただ損益計算書の方が貸借対照表よりも、
ごまかしがききやすいのも注意すべき所です。
単年度だけで成り立つ損益計算書より
蓄積された数値を記載した貸借対照表の方がより正確な数値を表しているのです。
その点を意識して計算書類を見ていって下さい。

6.終わりに
ここまで損益計算書と貸借対照表について見てきましたが、
これらの書類は一般には公開されていません。
法務局に行って履歴事項全部証明書を取得しても数値の把握は出来ません。
ではどうすれば相手方の計算書類を見られるかですが、
ある程度継続的な契約となるような場合には
契約条項に計算書類を閲覧謄写ができるという項目を盛り込み、
顧問税理士に分析してもらうのも一つかと思います。
大きな出来事は、よほどのことでない限り、前段階で数値に異常が現れます。
生きた数字を捉えるのは大変ですが、この稿がリスク回避に繋がれば幸いです。