破産時の財産隠しは合法か?

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1.支払で追い詰められていくと
人は追い詰められてくると、
目の前のことで精一杯になって周りが見えてこなくなります。
他方でどこかに冷静な視点がある場合もあります。
例えば何かアクシデントがあるとその対処で頭が混乱しますが、
頭の片隅には「でも、これだけは何とかしないと大変なことになる」
と考えているような場合です。
債務が膨らみ返済に追われている時も同じような状況にあると言えるでしょう。
目の前の返済期日までに支払を済まさなければならない、
「このままでは非常にまずい、
だから何かあったときに財産を護りたいから、
これをどこかに隠さなければ」
と思っても、それは不思議なことではありません。
ここでは、その財産隠しについて見ていきます。

2.財産隠しの手口
まず、もっとも手っ取り早いのが預貯金などの財産を隠すことでしょう。
例えば現金を引き出して自宅のどこかに隠してしまうやり方です。
いわゆるタンス預金です。
その他には引き出した現金を親族の通帳に入れたりして
預かってもらうなどが考えられます。
他には破産申立をするときには
所有している財産などを記載しなければなりませんが、
その書類に記載しないというケースもあります。

3.財産隠し・不動産の場合
次に不動産について見ていきます。
例えば自宅を守りたいために名義を親族に変えるなどです。
登記簿を見ると破産申立直前に「売買」や「贈与」で
登記名義を変えるケースが考えられます。
更に離婚をして「財産分与」で元配偶者に渡すということもあるでしょう。

4.財産隠しは法律上問題ないのか?
これらのケースは果たして問題ないのでしょうか?
結論から言うと、問題がないはずがありません。
全てクロです。
破産申立をするにあたっては色々な書類を準備して作成しなければなりません。
先ほど資産を書く項目があると伝えましたが、
その他にも直近で処分した財産がないのか、
直近の収支はどうかなど、多岐にわたって書類を準備していきます。
もし財産隠しがあったような場合は、
一連の書類から不自然さがクローズアップされるので
裁判所としては破産申立をした人への心証が悪くなるでしょう。
また管財人が就いたような場合には、郵便物が管財人の下に転送されますので、
隠していた財産もここでバレてしまいます。
後で財産隠しが判明した場合は、免責不許可になる可能性が高いですし、
詐欺破産罪で逮捕される可能性も否定できません。
隠すのは人情かもしれませんが、
後で受ける不利益的制裁を考えると慎みたいところです。

5.財産隠しで名義を変えた不動産はどうなるのか?
では名義を変えた不動産等はどうなるのでしょうか?
これは管財人等で否認権を行使される可能性があります。
これを行使されると名義は再び破産者の下に戻ります。

6.終わりに
これまで財産隠しの手口を見てきました。
追い詰められる異常な精神状態の下での行為ですから、
心理的にはわからなくはない面もあります。
しかし、それでは債権者が受ける不利益を考えると公平とは言えません。
財産隠しが明るみにでて受けるダメージを考えると、
絶対にやってはいけないことですので注意してください。