登記簿は語る

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1.はじめに
破産手続を含めた債務整理を弁護士や司法書士に相談する時点では、
相談者の多くは債務超過に陥っていることがほとんどです。
最初の時点では業績が良くないから、
その足りない部分を補うために融資を受けるなど、
ちょっとしたことから始めることが多いのでしょう。
そして、借りた金は返さなければいけないという思いを抱きつつ、
返済に向けて動かれる方が多いのです。
ところが他から借金をして返済をしていくようになると、
負債は雪だるま式に膨れあがっていきます。
金融機関であれば、信用情報センターが保有する情報の開示を受けて、
その方の情報をつかむことができますが、
一般の方にはそのような個人情報に触れることは困難です。
そこで、ここでは債務超過はどのような形で登記簿に現れるのかについて、
見ていきたいと思います。

2.登記簿とは
登記簿とは法務局にある情報で、
主に不動産の登記簿と商業法人の登記簿と2つあります
発行される証明書のことを登記簿謄本、
または登記事項証明書と呼んだりします。
不動産は土地と建物が別々に備わっています。
土地であれば所在や地番、宅地などの種類、面積が、
家屋であれば物件の所在や家屋番号、床面積などが記載されています。
商業登記簿で株式会社について見てみると、
会社の名前や本店の所在地、資本金や役員の氏名等が記載されています。
登記には他に債権譲渡登記の証明書や動産譲渡登記の証明書がありますが、
それは後述します。

3.不動産登記について
まず、不動産登記について見ていきます。
不動産登記には先ほどのように土地や建物の形状が記載されています。
それらに加えて甲区や乙区で権利関係が示されています。
甲区では所有権に関する事項が、
乙区では抵当権や賃借権などの権利事項が記載されています
乙区を見てみましょう。
抵当権や根抵当権などの登記が付いていて、
その後に他の権利が付いている場合があります。
登記の世界では原則として早い者勝ちですので、
先に登記をした者の権利が優先されます
ですので、1億円の抵当権がついているのに、
数百万円の抵当権を2番でつけても配当は期待できませんから、
意味がないように思えます。
だけど債権者としても、1円でも多く回収したいわけですから、
このような担保をつけることがあります。
このように銀行等の金融機関の担保権の後に、
個人の抵当権が付いている場合には、
あちこちでお金を借りている可能性があります。
なお、差押えや仮差押えといった事項は甲区で登記されます。
以前は支払が厳しくなったという時点で、
一斉に所有権移転仮登記や賃借権設定仮登記などの仮登記が
付くということがよくありました。
これらがついている不動産の所有者は、
かなり追い詰められていると思った方がいいでしょう。
差押えは言わずもがなです。

4.商業登記について
次に商業登記について見ていきます。
商業登記は会社の登記であり、
権利関係を示したものではありませんから、
直ちに会社の資産状況を判断するには適していないかもしれません。
他の資料や噂を基に判定していくことになるのでしょう。
例えば、資本金が急激に上がっていたり、下がっているような場合は、
会社に何かが起こっているのかもしれません
資本金はある程度ないと、
公共事業の受注ができないなど色々な事情があるのですが、
実体に合わない増資や減資を行っている場合は注意が必要です。
また商業登記簿には代表取締役以外に他の平取締役も記載されていますが、
決算期でもないのに役員の多くが入れ替わっていたりすると、
会社内部で何かあったのではないかと推察することができます

5.動産譲渡登記・債権譲渡登記について
最後に動産譲渡登記や債権譲渡登記について見ていきましょう。
これは会社が保有する機械などの動産や売掛金等の債権に対して、
担保を設定して融資を受けるような場合に使われます。
多くは不動産の担保の添え担保として使われていますが、
色々なものに担保が設定されていると、
それだけ資金繰りが苦しいのかもと推察されます。
ここで注意したいのは不動産と違い動産や債権は、
実際に存在しないものが登記できてしまいますので、
このようなモノに対して担保を設定する場合は、
先順位に担保が付いているかだけでなく、
実際に存在するのかを他の資料と現地で確認すべきではないかと思います
なお、不動産や会社の登記事項証明書とは違い、
動産譲渡登記や債権譲渡登記の登記事項証明書は
誰でも取得することができません。
概要証明書で状況を確認する形になります。

6.終わりに
ここでは登記簿から相手の懐事情を推察するを紹介しました。
登記簿、特に不動産登記簿は権利関係を把握するのに適した資料ですから、
これから取引をする所がどういう所なのかを下調べするのに適しています。
近年ではインターネットで低価格で謄本を取り寄せできますので、
それらをうまく使って安全な取引をして下さい。