プライバシーと信用の狭間にて

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1.はじめに
人には他人に知って欲しい事柄と、その逆に知って欲しくない事柄があります。
自分の背負っている借金、専門家に依頼した債務整理、
手続選択の結果として選んだ破産などは、
最も知られたくないことの一つだと思います。
それでは、このような借金や債務整理などを
他人に知られずに行うことは可能なのでしょうか?
また破産したということは、どこかに記録として残るものなのでしょうか?
ここでは、段階を追って見ていきます。

2.専門家に依頼する前
まず、債務整理を専門家に依頼する前の段階から見ていきます。
消費者金融などの金融機関で借金をしても、
通常通りに支払っていけば誰にも知られずに処理されていきます。
ところが、支払に行き詰まり出すと金融機関から督促の電話や、
時には訪問を受けたりします。
金融機関と言っても個人名で電話がかかってくるので
最初はわからないかもしれませんが、そのうち何度もかかってくるようになり、
家族に知れ渡ってしまうかもしれません。
金融業者の訪問に際しても社名を名乗ることはないでしょうが、
対応したのがご自身以外の家族の場合は、
借金があるとバレてしまう可能性があるでしょう。
この時点では、信用情報センターには借入がある旨は記載されるものの、
長期延滞などでない限りは事故情報は載りません。

3.専門家に依頼後
その後、債務整理を専門家に依頼したとします。
債務整理を弁護士や司法書士に依頼すると、
その窓口は本人から専門家に移ります。
金融機関からの郵便物や連絡は専門家の方に行くことになります。
この時点では、家族に相談などをしていない限り、
他人に知れ渡ることはありません。
専門家にも守秘義務がありますから、
容易に依頼者以外の他人には依頼内容を伝えることはありません。
ただし、会社からお金を借りるなどしていて債務整理の過程で
会社にも専門家から通知が行った場合は、
会社にも負債のことが知れてしまいます。
もっとも会社の事業規模にもよるでしょうが、社内全部に広まるのではなく、
一部の者のみが把握している形になるでしょう。
専門家に債務整理を依頼した時点で、
信用情報センターには債務整理中と表示されます。
信用情報センターにある情報は誰でも見られるものではありませんが、
金融機関は融資の審査の際などに利用します。
キャッシングなどは家族に内緒にしているものの
家庭ではマイホームを組む話が進んでいて、
融資の申込みを銀行でした場合は断られますし、
これを機に家族にもわかってしまうかもしれません。

4.破産の場合
債務整理の方針をどうするのか、その方針が決まったとします。
債務整理の方法は色々ありますが、
任意整理の場合であれば、官報などの国の発行する新聞に載ることもありません。
他方、民事再生や破産であれば、官報にご自身の名前が掲載されます。
とはいえ、官報に掲載されると言っても
一般の方がこの新聞を目にすることはほとんどありません。
以前に国家試験の合格者が自分の名前を探すのに官報を入手していましたが、
何か特別な目的でもない限り、手にすることはない新聞でしょう。
とはいうものの、一定の割合でこの「超個人情報」の入手に務めている人もいます。
例えば金融業者は融資の選別に大事な情報となりますから、
この情報を常に収集しています。
またいわゆるヤミ金業者もDMの送る所を、
この官報から入手していると言われています。
ですから、破産すると一時的にこのような業者から
DMが送られてくる可能性があります。
他方で、破産した旨は戸籍や住民票には記載されません。
市役所の発行する「身分証明書」という書類には、
残念ながら破産した旨の記載はされますが、
この書類を手にとって何かすることはそう多くはないでしょう。
要約すると調べれば破産の経歴は出てきますが、
そう簡単に目にすることはありません。
なお、信用情報センターの履歴には破産した旨の記載は行われます。
この記録は数年間は消えません。

5.終わりに
債務整理という場面では、
プライバシーという権利と真っ向から対立する所があります。
完全に誰にも知られずに債務整理を終わらせるのは、
ご自身の環境によると思いますが、
そう簡単には知られないのが実情と言えるでしょう。