1.役員になると
株式会社など法人の役員に就任すると高額の報酬がもらえるかもしれません。
他方で会社の役員が負う責任は大きく、
時には訴えられるリスクもあります。
このように役員はハイリスク・ハイリターンな立ち位置にあると言えます。
2005年の会社法改正前は株式会社の取締役は3人必要でした。
そのため名ばかりの役員が連なり、責任に対する意識が薄かった感も否めません。
それでは役員とはどのような場合に責任を負うのか、
ここでは株式会社の取締役を中心に見ていきます。
2.経営責任のポイント
まず株式会社では機関が大きく3つに分かれます。
一つは株主で構成される株主総会、
次に会社の業務執行を決定する取締役(会)、
取締役の業務等を監査する監査役です。
その中で株主総会は会社の最高意思決定機関ですが、
現実は取締役が豊富な情報を有し業務の執行に当たっています。
その中にリスクは潜んでいるのですが、
どれがクロでどれがシロかは、はっきりとはわからないものです。
そこで判断基準となるのが事実の認識に不注意がなかったのか、
そして意思決定に不合理がなかったのか、という点です。
3.法律上、役員は責任を負いやすい作り込みです
例えば取締役が集まり業務のあり方を決定する会議として取締役会があります。
この会議で決められたことが取締役会議事録に記載されます。
これは一定の手続を経て閲覧することが法律上認められています。
その中で議案に明確に反対している、
又は異議を唱えているなどの文言がない限り、
出席した役員は賛成したものとの推定を受けます。
推定を受けるとは業務執行に賛同したのと、ほぼ同じ立ち位置にあります。
このように取締役等の役員は重い責任を負いやすい立場にあると言えます。
4.法人が破産した場合の責任
では、法人が破産した場合には、
いわゆる平の取締役等も弁済などの責任を負う立場にあるのでしょうか?
結論から言うと、それだけで平取締役が責任を負うとは言えないでしょう。
会社の意思決定に関与する立場にあるとはいえ、
法人と自然人は別人格であるからです。
もっとも経営者保証などのように保証人となっていた場合は、
保証債務を履行しなければなりません。
また破産に至るには色々な事情があるのが通常でしょうが、
その決定的な要因に関与しているのであれば、
会社を取り巻く利害関係人から責任の追及を受ける可能性はあります。
5.責任を軽減する方法など
このように会社等の役員に就任することは、
事業に大きく関与できて自分の意思を反映させやすい反面、
訴えられるなどのリスクを伴います。
株主総会に責任免除の議案を出す、
あるいは社外取締役等に就任する場合には責任限定契約を結ぶ、
役員賠償責任保険をかけるなど方法は考えられますが、
まずは現状だけでなく先を見越して経営判断をしていくことが必要ではないか、
そんな気がします。