相続人不存在の手続き

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1.相続人不存在とは
相続人となるのは配偶者、子供、直系尊属、兄弟姉妹やその代襲者ですが、被相続人にそのような者がいない場合があります。
または相続人となる者は存在しているのですが、相続放棄をした結果として相続人が不存在となる場合があります。
ここでは相続人が不存在となった場合の手続きについて見ていきます。

2.相続財産管理人の申立
相続人は誰か、それは戸籍等で調査をすることになります。
その過程で相続人がいない、またはいても相続放棄をしている場合は家庭裁判所に相続財産管理人選任の申し立てを行います。
申立権者は利害関係人または検察官となっています。
利害関係人の具体例としては債権者や被相続人の財産管理等をしていた後見人などが挙げられるでしょう。
申立の段階で必要書類を提出し、予納金を納めます。
予納金の額はケースバイケースですが、100万円以下となることが多いです。
この予納金の中に官報公告費用や相続財産管理人の報酬が含まれています。
また相続財産管理人は、たいてい弁護士が就任します。

3.管理人選任後の手続きの流れ
相続財産管理人が選任されますと、2回官報公告を行って相続債権者への債権申出等を進めます。
その後、3回目の公告で相続人探索の公告を行います。
1回目の公告は2ヶ月、2回目の公告は2ヶ月、3回目の公告は6ヶ月の期間を要しますので、この段階で3回の公告と10ヶ月の期間が必要となります。
それが終わると特別縁故者の公告が行われます。
特別縁故者とは法定相続人ではないけれど、被相続人の療養看護をしていたり生計を共にしていた者のことを言います。
内縁関係にあったような場合が、この特別縁故者に当てはまります。
この申出の期間は3ヶ月です。
これらの一連の手続きが終わり、誰も申出を行わなかった場合には国庫へ帰属する形になります。

4.共有不動産はどうなるか
もし財産、例えば不動産が共有になっていて、共有者の一方が死亡し相続人が不存在であった場合は、一連の手続きを経て「特別縁故者不存在確定」という登記原因で持分移転登記を行います。
被相続人が死亡した時点で直ちに持分移転登記ができるわけではありません。

5.遺言という方法
このように、相続人不存在になるような場合は13ヶ月という期間を要し、予納金も高額になります。
被相続人に法定相続人が居らず、または居たとしても誰か他の人(例えば、内縁関係にある人)に財産を引き継ぎたいような場合は、遺言を作成する方が妥当かと思います。

6.終わりに
ここまで、相続人不存在の手続きについて見てきました。
相続人がいるのか判然としないケースは、相続関係に複雑な事情の絡んだ場合が多く見られます。
また簡単に処分できない不動産があるなどして対応が難しい場合もあります。
弁護士に相談して交渉や手続きを進めていく方が、手続きは順調に進んでいくものと思われます。

信託と遺留分

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1.はじめに
近年、信託がちょっとしたブームになっています。
信託というと投資信託のイメージがつきまといますが、ここでいう信託は家族信託のことを言います。
新しい財産管理の手法として近年注目されています。

2.信託とは
信託とは一定の財産を委託者が受託者に託し、そこで得た利益等を受益者に渡すというものです。
典型的なケースでは受託者が資産運用を行って受益者に利益を渡す方法になりますが、委託者から託された財産をただ預かっていて定期的に一定の財産を受益者に渡すような方法も信託に含まれます。
このような投資とは一線を画して家族間などで設計されたものを家族信託と言います。
例えば障害のある子供の将来に備えて受託者に財産を託し、定期的に受託者からその子供に財産を給付するようなものです。
親なき後の信託とも言います。
なお、信託には委託者・受託者・受益者と3者の存在が必要になりますが、委託者と受益者は同一でも構いません。

3.受益者連続信託
この信託で特徴的なものが受益者連続信託です。
これは第一受益者をA、A死亡後の第二受益者はBなどと、信託設計の段階で受益者を指定することができるのです。
信託された時から30年を経過したときは、受益権の新たな承継は1度だけ認められるという期間的な制約はありますが、受益者を連続して指定できるのがこの信託の大きなメリットとも言えます。
同じような制度に遺言がありますが、遺言は受遺者Aを指定することは可能でも、A死亡後の2回目の受遺者を指定することはできません。
遺言者より先にAが死亡した場合の受遺者は決められます。ここでは遺言者の死亡→A死亡のような場合です)

4.遺留分
他方、相続には遺留分という制度があります。
遺留分は相続人の最低限の相続分を保証した制度で、遺留分を侵害する贈与や遺贈があった場合は、相続人が遺留分減殺請求権を行使して、侵害された遺留分に見合う金額を請求できる権利です。
それでは、遺留分を侵害するような信託行為がなされていた場合、遺留分減殺請求権の行使は可能なのでしょうか?

5.信託と遺留分
この点については2018年に判例が出ており、信託がなされていても遺留分減殺請求の対象となり、遺留分を回避するように設計された信託契約は公序良俗に反し無効であるとしています。
本事件は控訴されてその後に和解していますが、争いのあるところであり、相続人の遺留分を侵害するような信託には注意したいところです。

6.終わりに
信託契約は契約を作成する者にイニシアチブがあります。

その方法が理想的な財産の承継なのかもしれませんが、他方で相続人の遺留分を侵害するような形態になっているのであれば、後々否定されるリスクがあります。
そのような場合に備えて、遺留分を確保した信託契約、受益者連続信託の制度を使った方法で契約を作り込むのが妥当と言えるでしょう。

使い道の定まらない不動産を相続した場合

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1.はじめに
相続とは一切の権利義務を承継する制度です。
これはいるけど、あれはいらないという注文は遺産分割協議で相続人全員の合意がない限りはできません。
また知っている知らないに関わらず、遺産を承継します。
もし相続人が1人であるならば、遺産分割という概念は発生しませんから、その全てを背負うことになるのです。
それがたとえ遠方にある不動産であってもです。
ここでは、被相続人が所有していた遠方の不動産、または使い道の決まっていない不動産を引き継いだ場合を見ていきましょう。

2.農地や山林を相続した場合
まず相続した不動産が農地や山林であった場合について見ていきます。
農地や山林を相続した場合は、相続登記と同時に不動産所在地の市役所等に相続に伴う届け出を提出します。
各自治体によって必要書類が違う場合がありますので、必要書類を確認してから提出します。
なお、この届け出を提出しない場合は過料に処せられます。

3.使用方法の決まってない不動産を相続した場合
続いて、相続した不動産について見ていきます。
今後も使い道が決まっている不動産であれば、その通りに使用していくことになります。
他方、使い道が決まっていない不動産は早めに処分する方が無難です。
第三者に賃借や売却したり、あるい相続した不動産が空き家である場合は解体するなどです。
何故かというと、相続した不動産が放置状態であれば雑草等が生い茂り、近隣に迷惑が及びます。
空き家であれば倒壊して近隣や通行人に損害が発生する蓋然性が高まります。
損害賠償請求や妨害排除の訴えといった訴訟リスクを抑えるために、早めに策を打つのです。
所有者には無過失責任があり、損害賠償請求等を受けた場合は厳しい立場に立たされることが多いのが大きな理由です。


4.不動産の国庫帰属制度
近年は相続登記の未了問題が社会問題として表面化し、誰が所有者かわからない不動産が増加しています。
このような情勢を受けて、相続登記の義務化と相続により取得した不動産の国庫帰属制度が法改正を経て導入されようとしています。
2023年の4月頃に施行されるのでは、と思われます。
ただ不要な不動産を国が全て受け容れてくれるわけではありません。
土地が帰属対象となりますが、その土地に担保がない、建物がない、土壌が汚染されてないなどいくつかの要件をクリアする必要があります。
実際のところ相続人不存在で被相続人に不動産があった場合でも、そのまま国庫に帰属することは少ないです。
多くは換価してその金銭が国庫に帰属する形が多くなっています。
他の制度のそのような運用方針から考えると、制度はできても不要な不動産の国庫への帰属は中々ハードルが高いのではないかと思われます。

5.終わりに
ここまで相続した不動産について見てきました。

新しい制度の運用が近々スタートしますが、それで問題が解決するとは思えません。
訴訟リスクを抑えるためにも、用途の決まってない不動産を早く処分するのが王道ではないかと思います。

株式の相続・議決権の観点から

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1.はじめに
相続とは、被相続人の所有していた債権債務の一切を引き継ぐ包括承継の一種です。
その中には現金や不動産だけでなく、株式も含まれます。
前回、誰が所有者かわからない所在不明株主の問題を紹介しました。
今回は株式を相続した場合の議決権について述べたいと思います。

 
2.株式を相続した場合
例えば、株式を100%保有しているオーナー株主が亡くなった場合を想定してみましょう。
この場合、株主総会を開こうにも株主が定まっていないため、何も議決できないという事態が起こります。
ところで先ほど株式も相続の対象になるとお伝えしました。
相続分は法律で定まっているので、その相続分に則って株式も受け継がれると考えられます。
そうすると配偶者と子供で50%ずつ相続した場合は、その割合に従って株式も相続されて議決権を行使できるように思われます。
しかし、遺産分割等で最終的に株主が決まらない限り、法定相続分の割合で議決権を行使することはできません。
株式は不可分債権で、その不可分なものを相続の段階で準共有していることになるので、未だ完全な状態とは言えないからです。

3.会社への通知
そうすると遺産分割協議が終わらない限り、株主として議決権を行使できない、株主総会で何も決められないように思われるでしょう。
このような場合に備えて会社法では、株主に相続が発生した場合は、相続人の過半数で議決権行使者を決定して会社に通知することを認めています。
最終的な株主の決定には時間がかかりそうな場合でも、当面は行使者を決めておくことで何も決められない事態を回避できることになります。
先ほどの例では配偶者と子供の過半数で議決権を行使する者を決めておけば、その者が総会に出席して対応する形になります。
また、この議決権行使者は株主側から会社に通知するケースが多いのですが、会社側から議決権を行使する者を認めることもできます。
ただし、この場合には民法の共有の規定に従って決められた者でない場合は議決権行使者にはなりませんので、安易な同意には注意したいところです。

4.議決権行使者を決められない場合 
このように議決権行使者を相続人の過半数で決める方法があるとしても、過半数の同意が得られない場合もありうるでしょう。
例えば、被相続人に子供が複数いて、仲が悪くて過半数の同意を得にくい場合です。
このような場合で仮に会社が同意を与えても有効な決議があったとは言いにくくなります。
もし株主が亡くなって議決権の行使すらままならない事態が起こりそうな場合は、遺言で株式の帰属者を決めておくのも方法です。
遺言は遺産分割より優先しますので、相続が発生した場合は株式が受遺者に受け継がれることになります。

5.終わりに 
ここまで株主に相続が発生した場合に議決権はどうなるのかについて見てきました。
100%オーナー株主は珍しくないのですが、相続が発生すると株主総会で何も決められない事態が起こりえます。
そのときに備えて策を打つことが紛争の予防にもつながるでしょう。

相続に伴う株主リスク

株主が誰であるか、それは会社にある株主名簿や、税理士が作成する別表2という書類を見ればわかります。
その株式も財産ですから、他の財産と同じように相続の対象になります。
とすると、相続を繰り返して細分化してる場合があります。
下手をすると誰が株主かわからない場合も起こりえます。
そうなると会社の運営はどうなるのでしょうか?
ここでは、株主に相続が発生した場合のリスクについて述べていきます。

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1.株主の権利

株式には色々な権利があります。
もっとも代表的なものは会社から配当を受ける権利、そして株主総会で意見を表明できる議決権です。
その権利を実現するために、株主には計算書類等の閲覧請求権や会社に対して訴訟を起こす権利も有しています。
株主に相続が発生すると会社に対して名義書換手続きをするなど諸々の手続きが必要となります。
他方で、経営陣にとっては何者かわからない人が会社の運営に口をはさむリスクを背負うことになります。


2.訴えを起こされた場合

もし株主総会決議取消の訴えや株主総会不存在確認の訴えが起こされたらどうなるのでしょうか?
これらは株主総会の招集手続きが定款や法令に違反していたり、決議した内容が法令に違反していたような場合に起こる訴訟です。
このような場合は原告である株主に担保提供を求めて濫訴を防いだり、決議取消の訴えの場合には裁量棄却を求めるなどの方法になるのでしょう。

 

3.株主の対策

こうならないようにするために会社設立時から株主対策をしておく必要があります。
具体的には、定款に株式買取請求の条項を設ける、または取得条項付き株式を発行するなどの方法です。

例えば、定款に
(相続人等に対する株式の売渡請求)
第○条 当会社は、相続その他の一般承継により当会社の株式を取得した者に対し、当該株式を当会社に売り渡すことを請求することができる。
2 前項に定める売渡請求に係る事項は、株主総会がこれを定める。

などの条項を盛り込んでおきます。
株式譲渡制限のある会社でも、相続の場合には相続人への株式移転を拒むことはできません。
そのような場合に備えて買取条項を用意しておきます。
また相続が発生した場合に株式を買い取るという内容の株式を発行していた場合は、上記定款の定めと同じ効果を得られます。

 

4.会社関係訴訟の相談は弁護士へ

もし株主から訴えられたら、どうすればいいのでしょうか?
この場合は弁護士に相談してください。
司法書士にも簡易裁判所での訴訟代理権はありますが、会社関係の訴訟は地方裁判所の専属管轄になります。
内容も株式の評価や相続など複雑に論点が絡んでいる場合が多いので、専門的な判断が必要です。
弁護士はそのような場合の専門家ですので、もし知らない株主から会社関係の訴訟を訴えられたら弁護士に相談してください。

 

5.終わりに

ここまで株主が相続した場合について見てきました。
株主に相続が発生すると、何も決議できない状態に陥ったり、争いにつながる場合があります。
特に平成2年(1990年)以前の会社は、設立時に7人の発起人が必要となっていました。
この発起人達に相続が発生し、株主の把握が難しくなる場合が今より高いといえます。
株主対策は事業が健全に動いているときこそ、講じる策だと思います。

法定相続情報証明とは

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1.はじめに
相続の手続きを進めるには、戸籍を集めなければなりません。
被相続人の死亡から出生まで遡りますので、何通にもなることが多いです。
しかも、手続きの中には3ヶ月以内と期限があるものもあり、同じものを何回も取らなければならない場合もあります。
生まれてから亡くなるまで、本籍地が同じ所であれば、負担も少ないですが、本籍地を転々としている場合は、全てを集めないといけませんので負担も大きくなります。
そのような場合に便利なのが、法務局で発行してくれる法定相続情報証明というものです。
別名、一覧図とも言います。
ここでは法定相続情報証明について見ていきます。


2.法定相続情報証明とは
法定相続情報証明は法務局に申請して作成してもらいます。
具体的には必要書類を収集して、相続関係図を作成して法務局に申請します。
その図に法務局が認証印を押印します。

■必要書類
必ず用意する書類
・被相続人の戸籍謄本等(出生~亡くなるまで)
 戸籍・除籍・原戸籍とありますが、戸籍等としています。
・被相続人の住民票の除票
・相続人の戸籍謄本(又は抄本)
・申出人の住所氏名がわかる公的書類(運転免許証等)

必要となる場合がある書類
・相続人の住民票
・専門家に頼む場合は委任状

■法定相続情報証明の管轄
法定相続情報証明はどこの法務局に申請してもいいわけではありません。
管轄があり、その法務局で申請します。

・被相続人の本籍地
・被相続人の最後の住所地
・申出人の住所地
・被相続人名義の不動産の所在地
 
■手数料
法務局に申請する費用は無料です。
法定相続情報証明の通数も、何通請求しても無料です。
専門家に依頼する場合は、その手数料が必要です。

■再交付
法定相続情報証明は、再交付ができます。
申請した法務局に再交付の申し出をすると、必要な枚数だけ発行してもらえます。
費用は無料です。
ただ法定相続情報証明を申請した人(申出人)しか再交付の申請はできません。
再交付のときには申出人の本人確認書類が必要です。
なお、再交付の期間は申し出の翌年から5年です。

 

3.こんなとき
①相続人が複数いる場合
相続人が複数人いる場合は、1人で申請をすることも可能ですが、後々再交付の場合も考えて複数人で申請しておいた方がいいでしょう。
申出人が1人だけですと、その人しか再交付できないからです。

②どこで使える?
法定相続情報証明は戸籍の束の代わりとなるものです。
使える所は金融機関、法務局、税務署等です。
令和2年10月から年金の手続きでも利用できるようになりました。
これらの所で相続手続きをする場合に戸籍の代わりに使用することができます。
ただ金融機関の中には、この書類を認めていないところもありますので、事前に確認してください。

 

4.注意点
①図の中に相続人の住所がない場合は、実際の相続手続きで住民票を求められます。
法務局の手続きでは相続人の住所の表記は任意ですが、必ず相続人の住所は入れるようにしましょう。
②税務申告の場合は、実子か養子など続柄を記載しておく必要があります
「子」では認められません。
③遺産を実際に誰が取得するのかを決めるのは遺産分割協議書等の書類です。
遺産分けの手続きには別途、これらの書類が必要です。

 

5.終わりに
ここまで法定相続情報証明について見てきました。
何度も同じ書類を役所で取る手間を考えると、便利なツールと言えます。
相続手続きの負担軽減の一助になるでしょう。

破産管財人の費用・報酬相場

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1.はじめに

破産管財人が破産手続きの事務処理に要する費用は基本的に破産者の負担になります。
破産管財人に選任された弁護士への報酬も、破産者が原則的に負担するルールです。

 

弁護士(破産管財人)への報酬や費用といえば、破産手続きが終わった後に支払うような印象があるかもしれません。
破産手続きの場合は特殊で、破産手続きをはじめるときに予納金というかたちで裁判所に支払うことになります。

 

破産手続きが終わったときは法人破産をする会社が消えています。
法人破産手続きに合わせて経営者自身も自己破産するケースが少なくないため、報酬や事務処理に要した費用を後払いにすると支払われない可能性が出てくるからです。

破産手続きの費用と報酬、つまり予納金は破産手続きの種類によって相場が変わってきます。

 

2.破産管財人の費用・報酬相場

少額管財の費用・報酬相場

破産手続きには同時廃止と管財事件があります。
管財事件はさらに普通管財と少額管財にわかれます。
同時廃止とは破産手続き開始決定と共に破産手続きが廃止(終了)になるタイプの破産手続きです。

 

破産手続きに支弁する費用すら乏しいケースで使われます。
そもそも資産が乏しいわけですから、破産管財人を選任して資産の管理や調査、換金、配当などを行う必要がありません。
破産手続きを同時廃止で行うときは破産管財人の選任はありません。

 

管財事件は、破産管財人の選任を行うタイプの破産手続きです。
法人破産手続きは基本的に管財事件で行います。
法人にはある程度の資産があるのが普通ですし、取引関係などから債権者も一定数いると考えられます。
そのため、弁護士を破産管財人に選任して、管財事件として資産調査などをしながら進めるのが基本なのです。

 

管財事件の中でも少額管財は予納金の額が少額なタイプの管財事件になります。
少額管財で破産手続きを行う場合の破産管財人報酬・費用の相場は20万円ほどです。

 

少額管財は予納金が少額なので魅力的に思うかもしれません。
少額管財を使いたくても条件に合致していなければ使えないという特徴があります。
少額管財で破産手続きを行うためには、弁護士に依頼していることや債権者が50社未満であるなどの条件を満たしている必要があります。

 

管財事件の費用・報酬相場

少額管財に対して通常の管財手続きがこちらです。
通常の管財事件の予納金は、少額管財より高額になっています。
通常の管財事件で破産手続きを行うときの破産管財人の費用・報酬の相場は70万円が最低ラインです。

 

法人の負債額によって相場金額が変わってくるため注意してください。
個人の管財事件の場合は相場金額がやや低くなり、相場の最低ラインが50万円ほどになります。

 

3.破産時は弁護士に相談するのがおすすめ

破産手続きは弁護士に相談することをおすすめします。
破産者にとって、破産手続きに関連する費用は、少しでも削りたいのが実情かもしれません。
しかし、破産手続きを弁護士に相談することは破産者にとって費用面で特にメリットがあるのです。

破産手続きを弁護士に相談するふたつのメリットは以下の通りになります。

 

破産時に弁護士に相談すると手続き費用の節約になる

破産手続きのときに弁護士に相談すると、弁護士費用などで高額になると思うかもしれません。
しかし実際は破産手続き全体の費用を節約できる可能性が高いのです。

 

破産手続きには同時廃止と管財事件という種類があります。
法人破産手続きの場合は、基本的に管財事件で破産手続きを進めることになります。
管財事件には予納金が低く抑えられている少額管財と通常通りの管財事件のふたつの種類があるとお話ししました。

 

法人破産手続きをするときに、可能ならば、予納金の低い少額管財を選択したいと思うのではないでしょうか。
少額管財と通常の管財事件を比較すると予納金相場に2倍近い差があるため、費用を節約したいときはますます少額管財で手続きしたいと思うはずです。

 

少額管財で破産手続きをする条件のひとつが「弁護士に依頼していること」です。
費用の節約のために弁護士に依頼しないという場合は、少額管財自体が使えない可能性があります。
弁護士に相談することで破産手続きを管財事件で済ませられる可能性があるため、総合的に費用面の節約につながるのです。

 

破産時の弁護士へ相談した方が破産手続きも早く終わる

破産手続きをするときに弁護士に相談のうえで手続きを依頼した方が、破産手続き全体が早く終了するというメリットもあります。

 

破産手続きは裁判所に「破産したい」と申し立てればいいわけではありません。
破産手続きを申し立てるためには、提出書類の準備が必要です。
破産手続きの実務に慣れている弁護士であればスムーズに準備できますが、法律や実務経験のない人が準備する場合は相応に時間がかかります。
裁判所に提出したときに不備などがあると、破産手続き開始までさらに時間を要することでしょう。

 

破産手続きがはじまってもすべてを裁判所や破産管財人任せにはできません。
破産手続きの申し立てをした人は、破産管財人の説明請求に応じるなど手続きに協力しなければならないのです。
手続きのときに対応がわからないとその分だけ破産手続きの完了まで時間を要します。
破産手続きが長引くということは、債務問題の最終的な解決にいたらない状態で手続き期間だけ伸びてしまうことに等しいのではないでしょうか。
いつまでも新しい生活ができません。

 

破産時に弁護士に相談して手続きを任せることで、破産手続き自体が早く終わる可能性が高くなります。
その分だけ法人の経営者が早く生活の建て直しができるというメリットがあるのです。

 

 

4.まとめ

法人破産手続きの破産管財人は基本的に弁護士が就任します。
破産管財人は法人破産手続きを進めるうえで重要な役割を果たすことになるのです。

 

法人破産手続きは費用や事前準備なども含めて複雑になっています。
弁護士がいないと破産手続きで少額管財が使えないなど戸惑うルールもあるはずです。
手続きの中で戸惑わないためにも、法人破産手続きをするときはまず弁護士に相談することをおすすめします。

破産管財人は弁護士がなるの?業務内容とは?

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1.はじめに
破産手続きでは主な事務を裁判所に代わって破産管財人が行うことになります。
破産管財人にはどのような人が選ばれるのでしょう。

費用や報酬はどうなっているのでしょうか。
この記事では法人破産で破産管財人を務める人や破産管財人の仕事内容、報酬や費用の相場などについて説明します。

 

 

2.破産管財人とは

破産管財人とは「法人破産手続きで各種の事務を行う裁判所に選任される人」になります。
法人破産手続きは裁判所に申し立てるため、裁判所がすべて行うと思うかもしれません。

 

実際は法人破産手続きの申立てをした後に裁判所が破産管財人を選任し、破産管財人が主な事務処理を行うという流れになります。
破産管財人の詳しい事務・仕事の内容については次の見出しで説明します。

 

法人破産手続きの破産管財人は弁護士が選任されます。
なぜ弁護士が破産管財人になるのかというと、破産手続きで各種の事務を処理するためには法的な知識や実務経験を要するからです。
破産管財人は弁護士の実務経験や破産事件の内容などを考慮して、裁判所の管轄地域内の弁護士を選びます。

 

3.破産管財人の仕事内容は主に4つ

法人破産手続きで選ばれた弁護士は破産管財人として4つの事務・仕事をこなします。
破産管財人になった弁護士の仕事内容は以下の通りです。

 

破産管財人は面談をするのが仕事

破産手続きを進める際に、まずは面談が行われます。
面談は破産管財人と申立人(法人の経営者など)で行いますが、破産手続きを弁護士に依頼している場合は弁護士も交えて3人で行います。
場を設けて面談することも破産管財人になった弁護士の仕事です。

 

1回あたりの面談は20~30分になります。
面談は1度だけ行われるケースもあれば、複数回行われるケースもあるのです。
個人の免責不許可事由に該当する可能性がある場合は面接も複数回行われる傾向にあります。
ただし、法人の破産手続きはまた別ですので注意してください。

 

面談の中では申立書の記載の確認や破産手続きにいたる経緯、現在の収入、負債を負った理由などを聞かれます
破産管財人になった弁護士は法人破産手続きの申立人を糾弾するために質問するのではなく「何から着手すべきか」「優先的に処理すべき事務は何か」などを確認するために申立人にいろいろ聞くのです。

申立書や他提出書類を読んだだけではわからないこともあります。
だからこそ、最も事情に通じている法人破産手続きの申立人に面談などを通じて確認するというわけです。

 

破産管財人は資産や債務の調査をする

破産管財人のふたつ目の仕事は債務や資産の調査です。

 

法人の資産などについては裁判所に提出される書類にも情報の記載があります。
しかし、中には記載を忘れた資産などがあるかもしれません。
破産管財人になった弁護士は申し立てのときに提出された書類に沿って資産の漏れがないか等を調査します。
債務の額や契約内容、債権者とのこれまでのやり取りなどについてもあらためて調査を行うことも破産管財人になった弁護士の仕事です。

 

法人破産手続きでは資産を債権者へと配当します。
配当を平等かつ正確に行うためには、資産と債務を正しく把握していなければいけません。
資産と債務の清算がしっかり行われないのであれば、法人破産手続きをした意味自体が失われかねません。

 

法人破産手続きを適切に進めるための情報収集や調査も破産管財人の仕事になります。
個人の破産手続きの場合は免責不許可事由の調査も破産管財人になった弁護士の仕事です。
個人の破産手続きでは財産隠しなどがあると債務の免責が受けられなくなります。
個人宛の郵便物を破産管財人のところに転送して確認するなど、個人の破産手続きで債務の免責を許すかどうか調査することも破産管財人の仕事です。

 

破産管財人には申立人などに説明を求める権利があります。
調査などのために破産管財人が説明を求めることがあれば申立人は協力し必要な説明を行わなければならないルールです。
調査への協力を拒んだり説明義務を果たさなかったりする場合は処罰の対象になる可能性があります。

 

破産管財人は資産を資金化する

破産管財人は調査や申立時に提出された書類で資産を把握すると、その資産の中で換金できるものを資金化します。
資金化することで債権者に配当するためです。

 

不動産や有価証券など価値のある財産は基本的に換金対象になります。
ただ、比較的安価でしか換金できない財産については残せる可能性があります。

資産を資金化したら債権者に平等かつ適正に配当を行うことも破産管財人になった弁護士の仕事です。
配当の際は債権者同士の利害がぶつかる可能性もあります。利害調整なども破産管財人の重要な仕事です。

 

破産管財人は債権者集会で報告する

法人破産手続きの終盤で債権者集会が開かれます。
債権者集会とは債権者に対する破産事情や事務の進捗状況の説明会のようなものです。
破産管財人になった弁護士は債権者集会で破産手続きの進捗などについて報告する仕事があります。

 

債権者集会には申立人や担当弁護士、裁判官、債権者、破産管財人などが参加します。
特に質問などが出なければ5分程度で終了する会です。
ただ、財産隠しなどが疑われているケースや法人破産手続きの債権者が多い場合、破産案件が複雑な場合などはもっと長い時間がかかることもあります。